稽古の前に道着を着るとパリッとしたすがすがしい気分になりますね。実は剣道着を着る所からすでに稽古ははじまっています。というのも、昇段試験では動きや礼儀作法だけでなく着装、剣道着や防具を正しく身に着けているかも重要だからです。今日は剣道の基本の一つともいえる剣道着の着方を説明します。
剣道着とは、何を着るの?
剣道着として道着・袴を着用します。基本的には剣道着の下は何も着用しないとされていますが、最近は下着やシャツの上に道着を着る方が多いです。冬場など、袖口が道着から出てしまわないように注意しましょう。
・剣道着
上半身は道着と呼ばれる服を着ます。ほつれや破れていないかを確認してから着ていきます。着装を正しくするのは動きやすさだけでなく、礼儀にもつながっています。
絶対に破れた道着を着て稽古などに行くことのないようにしましょう。また、袖の長さは肘の下までいかなければいけません。それより短いと小手を装着した際、道着と小手の間がノーガードになるため怪我をしてしまうかもしれません。袖の長さが十分な物を着用しましょう。
・袴
下半身には袴をはきます。道着はふとももあたりの長さなので、その上にかぶせるように履いていきます。袴には前と後ろがあり、後ろ側には腰板という硬い板が入っています。前側には長いヒモが、後ろ側には短めのヒモがついています。
剣道袴の前には5本のヒダが入っています。これは儒教における五つの基本的な人間関係を規律する「父子の親」「君臣の義」「夫婦の別」「長幼の序」「朋友の信」という五つの徳目、そして「仁」「義」「礼」「智」「信」という儒教における人が常に守るべき五つの徳目を表す五倫五常の教え、人として常に踏み守るべき道徳の教えを表しているといわれています。そして後ろにある一本のヒダは「男子として二心のない誠の道」を示しているといわれています。
どうやって着るの?
・道着の着方
道着には内側に2本、外側に2本ヒモがついています。袖を通した後、まず内側のヒモを蝶結びします。内側のヒモを結ぶと、自然と右側が下に、左側が上に重なる「右前」になります。和装は右前でないといけない、という原則があるのですが剣道においては動きやすい、という点で右前になっているようです。左前はどうしても「亡くなった方と同じ着方」というイメージが強く縁起が悪い着方、と思われてしまいます。そういった事がないよう、まず先に内側のヒモを結びましょう。
次に外側のヒモを同じく蝶結びします。最後に襟がきれいに重なっているかを鏡などで確認します。その際特に外側のヒモが縦結びになっていないかも合わせて確認しましょう。
・袴の着方
袴を着る際はまず前後を確認し、前側をもちズボンのように片足ずつ通します。前側についている長いヒモ、前紐を後ろへ通し、前で交差させ後ろ側で蝶結びします。位置は骨盤より上、おへその少し下になるように、動くと緩むので少しお腹をへこませた状態で結びましょう。この時も道着と同様に縦結びになっていないか、鏡などで確認しておきます。この後腰板を結ぶのですが縦結びになると腰板から結んだヒモが見えてしまいます。この状態でチェックしておきましょう。
次に後ろ側を結びます。腰板の裏側にはプラスチックのヘラと呼ばれる小さな板がついています。その板を先ほど結んだ前ヒモに通します。そして後ろ側の短めのヒモ、後ろ紐を前に持って交差させます。次に交差させて前側になった片方の後ろ紐を、すでに結んである前紐の下からくぐらせます。そしてぎゅっと締め、固結びします。固結びとは、2回こま結びをする結び方ですが、2回目結ぶ時に横ではなく縦方向にヒモを持ち結ぶと綺麗な結び目が作れます。
余った後ろ紐はそのまま前紐の下から通し、腰板の後ろあたりに入れてしまいます。着終わったら鏡を見て確認してみましょう。特に袴の裾はくるぶしが少し隠れる感じになっていなければもう一度着なおしましょう。それより長いとつま先にひっかかり転んで怪我の原因になってしまうかもしれませんし、短いと足の所作が相手に読まれやすくなります。特に初心者の方は短めに着てしまう傾向があるので一度鏡を見て確認してみましょう。
道着の着方を説明させていただきましたが、文字だけではどうしてもわからない事もあると思います。不安な方は動画も合わせてみて確認するといいでしょう。
道着・袴を買う際の選び方
剣道着を選ぶ際、洋服を選ぶ感覚で選んではいけません。同じ身長でも体格や腕の長さなどが違うからです。先ほども少し触れましたが、道着の着丈が短いと防具と道着の間で素肌が露出してしまい、怪我の原因になってしまうこともあります。また、最近は様々な素材の剣道着が売られています。通気性がいい物、伸縮性があり動きやすい物様々です。ではどうやって剣道着を選べばよいのでしょうか。正しい剣道着の選び方を解説していきます。
・身長や体格に合わせて選ぶ
まず基本になるのは自分の身長や体格に合わせて選ぶ事です。剣道着のサイズは洋服のようにSMLではなく00号から0.5刻みで5号まであります。身長が160㎝の人ですと、2号が推奨サイズになるのですが、がっしりした体格の方には少し短めになってしまいます。剣道着は男女兼用サイズになりますので、女性の方ですと数字だけで選んだ結果ブカブカになってしまう場合があります。道着は大き目でもなんとかなるのですが、袴は大き目ではいけません。裾が長すぎてしまうと転んで怪我の原因にもなるのできちんと長さを測って選びましょう。
メーカーや色などによって大きさとサイズ表記が変わっている場合があります。特にネット通販で買われる方は女性からウエストからくるぶしまで、男性ですとベルトあたりからくるぶしが隠れる程度までの長さをあらかじめ測っておくといいでしょう。不安な方は剣道専門店にて試着させてもらったり、相談に乗ってもらうと間違いがありません。
・素材を選ぶ
昔は剣道着といえば綿の物しかなかったのですが、今では化学繊維の袴やジャージ製の道着などが作られています。綿は吸水性が良く、特に夏場などは涼しい上に見た目も高級感があるのですが洗濯しても乾きにくい所があります。その点、ジャージ製の道着やテトロンなどの化学繊維の袴は伸縮性があるため動きやすく、値段もお手頃なのです。通気性が良すぎるため冬寒く、乾燥機が使えない場合があります。
段審査などの正式な試合の時はジャージといった化繊の道着は敬遠されます。
練習用に気軽に洗濯できる化繊のジャージ一式、段審査を受けられる方は綿の道着一式購入し交互に使っていくといいでしょう。
最後に
今回は初心者に方にもわかりやすい道着の着方・選び方を説明させていただきました。剣道において、きちんと道着を着ることができているかも礼儀作法の一つとして見られているため大切なことなのですが、意外と間違えた着装をされている方もみえます。経験者の方も剣道を初めて間もない方も一度確認されてはいかがでしょうか。
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