全日本学生剣道選手権大会とは

全日本学生剣道選手権大会は、大学生の剣道日本一を決める最高峰の個人戦トーナメントです。主催は全日本学生剣道連盟と毎日新聞社。

1953年（昭和28年）の第1回大会から始まり、2025年で第73回を数える歴史と伝統を誇る大会です。

この大会は単なる学生剣道の頂点を決めるだけでなく、後の全日本剣道選手権や世界選手権で活躍する名選手を数多く輩出してきました。日本剣道界における人材育成の重要な舞台として、大きな意義を持っています。

大会の特徴と価値

厳しい予選を勝ち抜いた精鋭たちの戦い

全国各地域の予選を勝ち抜いた176名のみが出場できる狭き門です。特に関東地区は参加人数が多く、強豪選手がひしめくため、関東予選を突破すること自体が至難の業と言われています。

大学生は高校生までと比べて試合機会が少なく、各大学の代表になることも一苦労。そのため、この大会に出場する選手は真の実力者ばかりで、非常にレベルの高い試合が展開されます。

日本剣道界を牽引する選手の登竜門

近年の優勝者には、以下のような著名剣士が名を連ねています。

西村英久選手（筑波大学出身・現熊本県警察）
- 第57回大会優勝
- 全日本剣道選手権大会で3度の優勝
- 日本剣道界を代表する名選手

安藤翔選手（国士舘大学出身）
- 第60回大会優勝
- 世界選手権個人・団体両部門制覇

村瀬諒選手（日本体育大学出身）
- 第61回大会優勝
- 世界選手権メンバー

山田凌平選手（明治大学出身）
- 第64回大会優勝
- 世界選手権メンバー

このように、学生選手権の優勝者が後に日本・世界を舞台に活躍する事例は数多く、この大会が剣道界における重要な人材発掘・育成の場となっていることがわかります。

出場資格と予選システム

各学生剣道連盟が実施する予選大会から、規定された人数が全日本学生剣道選手権大会に出場できます。

地域別出場枠（合計176名）

北海道学生剣道連盟：10名
東北学生剣道連盟：14名
関東学生剣道連盟：60名（最多枠）
東海学生剣道連盟：18名
北信越学生剣道連盟：10名
関西学生剣道連盟：30名
中国四国学生剣道連盟：16名
九州学生剣道連盟：18名

関東地区の60名という出場枠は最多ですが、それでも参加大学数と選手層の厚さを考えると、関東予選の競争率は極めて高く、「関東予選を突破できれば全国でも上位を狙える」と言われるほどです。

大会の歴史と変遷

全日本学生剣道選手権大会は、男女同日程で開催され、大阪と東京の日本武道館を隔年で開催地としています。

選手権大会（個人戦）が大阪で開催される年は、優勝大会（団体戦）が東京で開催されるという交互開催の形式を取っています。

73回の歴史の中で、様々な強豪大学と名選手が激戦を繰り広げてきました。特に国士舘大学、筑波大学、鹿屋体育大学、中央大学などは常に上位に名を連ね、日本学生剣道界を牽引してきました。

なお、第68回大会（2020年）は新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となりました。


引用：全日本剣道連盟ホームページ

歴代入賞者一覧（男子個人戦）

第1回（1953年）から第73回（2025年）までの全記録を掲載しています。優勝、準優勝、三位の選手名と大学名を記録しました。

回数	優勝	準優勝	三位
第73回 2025年 （令和7年）	藤島心 （日本体育大学）	高島壮右馬 （筑波大学）	中尾王真（法政大学） 舩迫仁也（鹿屋体育大学）
第72回 2024年 （令和6年）	矢野将利 （法政大学）	平尾尚武 （筑波大学）	中田竜之介（国士舘大学） 田城智也（筑波大学）
第71回 2023年 （令和5年）	木村恵都 （鹿屋体育大学）	鈴木龍哉 （法政大学）	矢野将利（法政大学） 山本清吾（日本体育大学）
第70回 2022年 （令和4年）	岩部光 （国士舘大学）	大平翔士 （筑波大学）	重黒木祐介（筑波大学） 小畔直（中央大学）
第69回 2021年 （令和3年）	黒川雄大 （筑波大学）	木村恵都 （鹿屋体育大学）	岩部光（国士舘大学） 中村謙太（同志社大学）
第68回 2020年 （令和2年）	新型コロナウイルス感染防止のため大会中止
第67回 2019年 （令和元年）	星子啓太 （筑波大学）	松﨑賢士郎 （筑波大学）	白鳥湧也（筑波大学） 山崎将治（中央大学）
第66回 2018年 （平成30年）	矢野貴之 （国士舘大学）	福居義久 （国士舘大学）	星子啓太（筑波大学） 丸山大輔（中央大学）
第65回 2017年 （平成29年）	牧島凛太郎 （鹿屋体育大学）	平野青地 （専修大学）	貝塚泰紀（日本体育大学） 星子啓太（筑波大学）
第64回 2016年 （平成28年）	山田凌平 （明治大学）	貝塚泰紀 （日本体育大学）	三上ヘンリー大智（中央大学） 牧島凛太郎（鹿屋体育大学）
第63回 2015年 （平成27年）	林田匡平 （筑波大学）	梅ケ谷翔 （中央大学）	勇大地（早稲田大学） 竹ノ内佑也（筑波大学）
第62回 2014年 （平成26年）	梅ヶ谷翔 （中央大学）	村瀬諒 （日本体育大学）	今村侑資（大阪体育大学） 永井雪新（中央大学）
第61回 2013年 （平成25年）	村瀬諒 （日本体育大学）	高倉寛矢 （国士舘大学）	菊池和史（大阪体育大学） 舞原倫秀（日本体育大学）
第60回 2012年 （平成24年）	安藤翔 （国士舘大学）	浅井亮 （鹿屋体育大学）	山本大喜（国際武道大学） 中澤公貴（国士舘大学）
第59回 2011年 （平成23年）	藤岡弘径 （国士舘大学）	岩根佑馬 （中央大学）	加藤正矢（大阪体育大学） 中澤公貴（国士舘大学）
第58回 2010年 （平成22年）	木谷洋亮 （鹿屋体育大学）	石田雄二 （国士舘大学）	江島千陽（鹿屋体育大学） 松崎桂一郎（国士舘大学）
第57回 2009年 （平成21年）	西村英久 （筑波大学）	松尾修平 （東京農業大学）	胡谷俊樹（慶應義塾大学） 寺島光紀（筑波大学）
第56回 2008年 （平成20年）	畠中宏輔 （国士舘大学）	大石寛之 （大阪体育大学）	八田篤（関西学院大学） 西村英久（筑波大学）
第55回 2007年 （平成19年）	山城崇影 （鹿屋体育大学）	田中達也 （法政大学）	高原和彦（早稲田大学） 高橋吉孝（大阪体育大学）
第54回 2006年 （平成18年）	大石寛之 （大阪体育大学）	勝見健太 （同志社大学）	畠中宏輔（国士舘大学） 渡邉亮二（早稲田大学）
第53回 2005年 （平成17年）	芹川勝也 （鹿屋体育大学）	鹿野充成 （国士舘大学）	三根佑介（筑波大学） 山本翔平（立命館大学）
第52回 2004年 （平成16年）	中澤圭介 （中央大学）	松本勝範 （専修大学）	鹿野充成（国士舘大学） 三根佑介（筑波大学）
第51回 2003年 （平成15年）	西村健 （関西大学）	高山勝彦 （埼玉大学）	藤田啓介（大阪体育大学） 上原裕二（中央大学）
第50回 2002年 （平成14年）	野口貴志 （中央大学）	黒澤尚希 （駿河台大学）	迫丸卓哉（東海大学） 橋本桂一（帝京大学）
第49回 2001年 （平成13年）	田中純 （法政大学）	榎田康太 （中央大学）	吉田健司（愛知学院大学） 植田桂介（同志社大学）
第48回 2000年 （平成12年）	宮川覚次 （筑波大学）	永井博史 （創価大学）	福岡伸二（鹿屋体育大学） 合谷岳志（大阪体育大学）
第47回 1999年 （平成11年）	権瓶巧泰 （国士舘大学）	東永幸浩 （中央大学）	菅野貴史（青山学院大学） 林洋太郎（福岡教育大学）
第46回 1998年 （平成10年）	北条忠臣 （明治大学）	外之内貴洋 （早稲田大学）	小関太郎（東海大学） 坂本崇（筑波大学）
第45回 1997年 （平成9年）	岩見務 （日本大学）	高鍋進 （筑波大学）	加藤幹（中京大学） 古澤庸臣（鹿屋体育大学）
第44回 1996年 （平成8年）	立花義人 （同志社大学）	榊大輔 （徳山大学）	塚本幹博（九州産業大学） 泊潤（中京大学）
第43回 1995年 （平成7年）	菊川省吾 （筑波大学）	浅田健二 （中央大学）	安藤戒牛（国士舘大学） 高橋博美（中京大学）
第42回 1994年 （平成6年）	安藤戒牛 （国士舘大学）	佐藤充伸 （国士舘大学）	後木浩成（中京大学） 山中伸志（慶應義塾大学）
第41回 1993年 （平成5年）	安藤戒牛 （国士舘大学）	銀杏田誠 （鹿屋体育大学）	立見顕久（京都産業大学） 浅田健二（中央大学）
第40回 1992年 （平成4年）	山下忠典 （中央大学）	谷秀俊 （明治大学）	上橋重広（亜細亜大学） 福井賢次（国士舘大学）
第39回 1991年 （平成3年）	有田祐二 （筑波大学）	河野雄一 （筑波大学）	鍋山隆弘（筑波大学） 松原剛（東海大学）
第38回 1990年 （平成2年）	谷裕二 （東海大学）	飯田栄一 （筑波大学）	立花貴賢（専修大学） 二階幸喜（青森大学）
第37回 1989年 （平成元年）	松尾好郎 （筑波大学）	井口清 （流通経済大学）	下橋和彦（鹿屋体育大学） 高橋直樹（筑波大学）
第36回 1988年 （昭和63年）	田中宏和 （国士舘大学）	栄花直輝 （東海大学）	原教仁（専修大学） 江藤善久（国士舘大学）
第35回 1987年 （昭和62年）	染谷恒治 （国士舘大学）	矢野雅之 （国士舘大学）	栗山太（国士舘大学） 中村泰之（中京大学）
第34回 1986年 （昭和61年）	宮本敏雄 （国士舘大学）	遠山雅也 （国士舘大学）	橋本忠則（青山学院大学） 町田俊之（大阪体育大学）
第33回 1985年 （昭和60年）	中山睦友 （中央大学）	宮本敏雄 （国士舘大学）	岩切公治（国際武道大学） 平野誠司（大阪体育大学）
第32回 1984年 （昭和59年）	佐賀豊 （筑波大学）	広瀬光昭 （明治大学）	石井健次（東海大学） 稲井宏博（慶應義塾大学）
第31回 1983年 （昭和58年）	石田利也 （大阪体育大学）	坂田秀晴 （国士舘大学）	永留英紀（専修大学） 佐藤俊明（青山学院大学）
第30回 1982年 （昭和57年）	佐藤昭 （同志社大学）	三浦賓也 （早稲田大学）	坂井健二（日本大学） 飛知知利文（東海大学）
第29回 1981年 （昭和56年）	山中洋介 （筑波大学）	荒平正二 （国士舘大学）	栗山信浩（国士舘大学） 安元博道（京都産業大学）
第28回 1980年 （昭和55年）	石本公宏 （中央大学）	林朗 （法政大学）	目黒敬二（明治大学） 荒平正二（国士舘大学）
第27回 1979年 （昭和54年）	中野堅司 （国士舘大学）	黒山鉄夫 （中京大学）	田中秀成（近畿大学） 牟礼安弘（法政大学）
第26回 1978年 （昭和53年）	岸本勝信 （同志社大学）	林朗 （法政大学）	渡部憲雄（中央大学） 佐竹四郎（国士舘大学）
第25回 1977年 （昭和52年）	大城戸功 （松山商科大学）	水田孝信 （明治大学）	白木清道（国士舘大学） 上田優人（早稲田大学）
第24回 1976年 （昭和51年）	平井節朗 （大東文化大学）	岩本哲也 （専修大学）	渡部憲雄（中央大学） 亀井徹（明治大学）
第23回 1975年 （昭和50年）	町吉幸 （慶應義塾大学）	永田昌彦 （近畿大学）	谷口玄一郎（慶應義塾大学） 右田幸次郎（国士舘大学）
第22回 1974年 （昭和49年）	宮沢保信 （国士舘大学）	前原正作 （中京大学）	山渋浩司（慶應義塾大学）
第21回 1973年 （昭和48年）	矢野雅彦 （同志社大学）	宮沢保信 （国士舘大学）	渡辺直幸（東海大学）
第20回 1972年 （昭和47年）	氏家道男 （国士舘大学）	渡辺直 （東海大学）	轟木利孝（中央大学）
第19回 1971年 （昭和46年）	鳥巣健 （福岡大学）	川添哲夫 （国士舘大学）	鈴木一実（國學院大學）
第18回 1970年 （昭和45年）	久保木優 （日本大学）	渡辺隆 （法政大学）	若杉有三（東洋大学）
第17回 1969年 （昭和44年）	野崎義昭 （中京大学）	佐山修一 （中京大学）	蒔田実（東海大学）
第16回 1968年 （昭和43年）	神谷明文 （関西学院大学）	藤原崇郎 （国士舘大学）	辻英信（関西大学）
第15回 1967年 （昭和42年）	近藤重助 （慶應義塾大学）	福本英男 （明治大学）	安井博記（関西学院大学）
第14回 1966年 （昭和41年）	下地哲夫 （中央大学）	稲吉正道 （愛知大学）	高野道生（国士舘大学）
第13回 1965年 （昭和40年）	白藤一郎 （関西大学）	古沢里司 （東京教育大学）	村上五十二（関西大学）
第12回 1964年 （昭和39年）	池田健二 （早稲田大学）	倉沢正 （日本大学）	小島智士（明治大学）
第11回 1963年 （昭和38年）	土谷弘明 （関西学院大学）	松木英清 （法政大学）	池田健二（早稲田大学）
第10回 1962年 （昭和37年）	柴田英一郎 （関西学院大学）	渡辺洋一 （慶應義塾大学）	鹿島学（立命館大学）
第9回 1961年 （昭和36年）	惠土孝吉 （中京大学）	白木英治 （国士舘大学）	州沢勝彦（東京農業大学）
第8回 1960年 （昭和35年）	川上岑志 （関西大学）	惠土孝吉 （中京大学）	矢木司孝（甲南大学）
第7回 1959年 （昭和34年）	川上岑志 （関西大学）	惠土孝吉 （中京大学）	古荘龍弘（中央大学）
第6回 1958年 （昭和33年）	惠土孝吉 （中京大学）	川上岑志 （関西大学）	津村耕作（中央大学）
第5回 1957年 （昭和32年）	白井教雅 （甲南大学）	近藤勁助 （中京大学）	伝法公敏（北海学園大学）
第4回 1956年 （昭和31年）	藤田吾郎 （法政大学）	大川博隆 （関西大学）	伝法公敏（北海学園大学） 松原輝幸（法政大学）
第3回 1955年 （昭和30年）	松本静二 （中央大学）	林平作 （法政大学）	高木高義（東京農業大学） 中島芳紀（明治大学）
第2回 1954年 （昭和29年）	記録なし
第1回 1953年 （昭和28年）	記録なし

引用：全日本剣道連盟ホームページ 

大会記録から見る傾向

連覇を達成した名選手たち

複数回優勝を果たした選手は極めて少なく、それだけにその偉業は特筆に値します。

安藤戒牛選手（国士舘大学）
第41回・第42回と連覇（1993年・1994年）
さらに第43回大会では三位入賞

川上岑志選手（関西大学）
第7回・第8回と連覇（1959年・1960年）
前後の大会でも準優勝2回を記録

惠土孝吉選手（中京大学）
第6回・第9回で優勝
第7回・第8回は準優勝と、4大会連続で決勝進出

これらの選手は、学生時代から圧倒的な実力を発揮し、後の剣道界を牽引する存在となりました。

強豪大学の変遷

時代によって優勝校の傾向が変化しています。

昭和30年代～40年代（1950年代～1960年代）
関西学院大学、関西大学、中京大学など関西勢が活躍

昭和50年代～平成初期（1970年代～1990年代）
国士舘大学、筑波大学、中央大学など関東勢が台頭

平成後期～令和（2000年代～現在）
筑波大学、国士舘大学、鹿屋体育大学が三強として君臨
法政大学、日本体育大学、明治大学なども優勝者を輩出

特に筑波大学と国士舘大学は、多くの優勝者・入賞者を出し続けており、学生剣道界を代表する強豪校として確固たる地位を築いています。

この記録を活用するために

この歴代記録は、以下のような活用が可能です。

・現役学生剣士が目標とする先輩選手の経歴を知る
・各大学の剣道部の歴史と伝統を理解する
・日本剣道界の系譜を辿る
・大会観戦時の参考資料として活用する
・剣道指導の際の事例として紹介する

学生剣士の皆さんには、この記録を見て、先輩たちが築いてきた歴史を感じ、自らもその系譜に名を連ねることを目標に稽古に励んでいただきたいと思います。

今後も本記録は随時更新してまいりますので、機会がありましたらぜひお立ち寄りください。