剣道面の正しい手入れ方法とは?プロが教える秘伝の技
剣道の防具の中でも、面は特にデリケートな手入れが必要です。
金属の面金、革の面縁、綿の布団部分など、複数の素材が組み合わさっているため、「自分で洗えるのか?」「どうやって手入れすればいいのか?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、剣道防具専門クリーニング「剣洗」を運営する武蔵坊の露木幹也社長に、家庭でできる剣道面の正しい手入れ方法を詳しく教えていただきました。
洗い方から脱水、乾燥まで、面を長持ちさせるための秘訣を徹底解説します。
- 剣道面を家庭で洗う具体的な方法
- 面縁を傷めない洗い方のコツ
- 洗濯機を使った脱水の正しいやり方
- 効率的な乾燥方法と注意点
- 面紐や閂(かんぬき)の手入れポイント
解説動画はこちら
この記事は、以下のYouTube動画「BUSHIZO TV『剣洗』秘伝の技 #06」の内容を文字起こしし、詳しく解説したものです。
動画では実際の手入れの様子をご覧いただけますので、ぜひ合わせてご視聴ください。
※動画リンク:https://www.youtube.com/watch?v=l4HwKDj6B-g
剣道面の洗い方|基本の手順
準備するもの
- 中性洗剤(台所用洗剤やおしゃれ着用洗剤)
- 柔らかいスポンジ
- 大きめの容器または浴槽
- 30〜35度のぬるま湯
- バスタオル数枚(脱水時に使用)
手順1:面の下準備と洗剤の塗布
露木:「手刺しのほうでいいのかしら?」
──「あ~すごい柔らかいです。」
露木:「柔らかいでしょ?握りやすいですね。こっちはまださっき全然いじっていないんで固いんですよ、振ってみるとわかりますけど」
──「あ、そうですね。全然違いますね。」
まず、面の汚れやすい部分を確認します。
特に汚れが気になるのは以下の箇所です:
- 顎の部分(最も汗が染み込む箇所)
- 内側全体(頬や額が触れる部分)
- おでこ部分は比較的汚れが少ない
露木:「面の汚れているところって、たいがいもう顎。気になるところは顎と内側です。おでこはあんまり汚れていないです。」
中性洗剤を直接スプレーします:
・顎部分にシュッシュッと吹きかける
・内側にもシュッシュッと吹きかける
・そのまま約1分間放置して洗剤を浸透させる
手順2:水に浸ける(重要なポイント)
大きめの容器または浴槽に30〜35度のぬるま湯を用意します。
- お風呂の残り湯は使用しない(汗と同じ成分が含まれているため)
- 水温は30〜35度が最適(体温程度まで。熱いお湯は革を傷める)
- 面縁は極力濡らさない(長時間の浸水を避ける)
露木:「お風呂の残り湯はダメです。剣道やって汗かいたのと一緒のものだから」
──「新たに水を入れてあげるのですね。」
露木:「そうですね。あと、温度も大事。小手もそうなんですけど、熱いと革が傷んじゃうんで。30~35度くらいですね。要は体温ぐらいまでなら同じ状況なので許せるかな。」
面縁を濡らさないコツ
面縁(めんぶち)とは、面金の周囲を覆っている革の部分です。
この部分は特にデリケートで、長時間水に浸けると革がふやけて傷んでしまいます。
露木:「できればここの面縁の際くらいのところで、水がつくのをおさえてあげる。若干つくのは問題ないんですけど」
──「面金とかはつけないほうがいいんですか?」
露木:「面金自体はいいんですけどね、面縁のところが…ここの朱塗りと黒塗りの部分が剥げてくると、素の革が出てきて、そこから水をバンバン吸い込むんですよ。そうすると、ふやけ過ぎちゃうんですよね。で、すごく革にダメージを与えてしまいます」
水位の目安:
面縁の縫い目の手前くらいまでの水位にする
若干面縁にかかっても短時間なら問題ないが、極力避ける
露木:「きれいに塗ってある場合は、若干かぶっても問題ないんですけども、極力この面縁はご家庭で洗う場合は濡らさない方がいいかな」
手順3:浸け置き(約5分)
面を水に浸けると、中の空気が抜けて気泡が出てきます。
この気泡が止まったら、水が中まで浸透したサインです。
露木:「5分くらい。気泡が止まったら中まで水が浸透しているので」
──「それがだいたい5分くらい?」
露木:「5分くらいですね。5分くらいで、プクプクいうのが止まってきたら、今度は先ほどと同じように柔らかいスポンジで泡立ててあげて」
浸け置き時間の目安:
・約5分間浸ける
・気泡が出なくなったらOK
・長時間の浸け置きは革を傷めるので避ける
手順4:スポンジで洗う
柔らかいスポンジを使って優しく洗います:
- 外側:軽くなでる程度(強くこすらない)
- 内側:汚れた部分をしっかり洗う
- 耳周り:皮脂が溜まりやすいので丁寧に
露木:「外は軽くなでるくらいで、中は汚れたところをきれいに洗います。耳とかの辺りの皮脂が入り込んでしまっているところはタワシを使っても内側はいいかもしれないですけどね」
💡 ポイント:内側の汚れがひどい場合は、タワシを使っても構いません。ただし外側は柔らかいスポンジで優しく洗いましょう。
手順5:すすぎ(重要工程)
すすぎは特に重要な工程です。
洗剤が残ると臭いの原因になるため、しっかりと洗い流します。
露木:「すすぎはジャンジャンと。外側もジャンジャンすすぐんですけど、汗がいっぱいついているのは、頬の部分と顎の部分なので、ここはもうジャンジャンすすぎます」
──「シャワーですか?」
露木:「シャワーがいいですよね。シャワーでジャーと流していきます」
すすぎの手順:
- 内側からシャワーでしっかり流す
- 頬部分と顎部分は特に念入りに
- 外側も忘れずにすすぐ
- 上からだけでなく、内側からもすすぐ
露木:「上からばかりすすいでいると、今度は流れきらなかったものが内側にたまるので。なので、内側もきれいにすすいであげると、臭いも結構きれいに取れます」
露木:「汗をかいて一番汚れがたまっていくのが、この顎からのこの部分なんですよね。この部分に一番汗が染み込んでいるというか」
⚠️ この段階で面縁が多少濡れても問題ありません。浸け置きと違い、水が流れていくだけなので革へのダメージは少ないです。
リンスは使う?使わない?
──「面は小手と同じように、リンスとかしなくていいのでしょうか?」
露木:「あ、やってもいいと思いますね。しっとりしますね。この革の部分のダメージも、保湿してくれた方が柔らかくなるので」
リンスを使用する場合:
・柔軟剤やヘアリンスを薄めて使用
・革の保湿効果が期待できる
・面の柔らかさを保つことができる
・使用後はしっかりすすぐこと
剣道面の脱水方法|洗濯機を使った正しいやり方
脱水の重要性
脱水をするかしないかで、乾燥時間が大きく変わります。
- 脱水あり:約1日半で乾く
- 脱水なし:約2日半かかる
- 差:約1日の短縮が可能
露木:「面もできれば脱水した方が…」
──「洗濯機の脱水ということですか?」
露木:「洗濯機の脱水だけ。だけど、面が入らない洗濯機だと、このまま干していただくことになるので、乾くのに2日半くらいかな」
洗濯機での脱水手順
⚠️ 注意:ドラム式洗濯機は使用できません。縦型洗濯機のみ使用可能です。
- バスタオル2〜3枚を用意
- 面の内側にバスタオルを詰める(型崩れ防止)
- 面全体をバスタオルで包む
- 洗濯槽の隙間にもタオルやスポンジを詰める(固定のため)
- 面が動かないように完全に固定する
露木:「脱水については、ドラム式はだめで、縦型であれば同じく1分くらい回します。タオルでくるんで、洗濯槽の中に隙間があったら隙間にも全部タオルとかこういうスポンジとかをがーっと入れていって、面が動かないように、型が崩れないようにしてあげて1分脱水。」
脱水時間:1分以内
長時間回すと型崩れの原因になるため、1分以内で止めましょう。
露木:「たまに、洗濯機の中で面がガラガラ回っているのをyoutubeとかで見ると、『おおー大丈夫かなあ』と」
──「それこそ、まわりにバスタオルなどを詰めて?」
露木:「そうそう。詰めて固定して。それで、自分の好きな面型に固定して。1分以内で脱液してあげると、小手と同じようにかなり早く乾きます。面だったら1日半かな」
洗濯機が使えない場合
洗濯機に面が入らない、またはドラム式しかない場合は、以下の方法で水気を取ります:
- バスタオルで面全体を包む
- 上から軽く押して水分を吸い取る
- 扇風機やサーキュレーターで風を当てながら干す
剣道面の乾燥方法|効率的に早く乾かすコツ
なぜ洗った面は早く乾くのか?
露木社長によると、洗った面の方が、稽古後の濡れた面よりも早く乾くそうです。
露木:「塩分とか汗の成分とか皮脂とかが落ちているので、乾きは稽古の後より早いです、びしょびしょでも」
──「へええ、そうですか。」
露木:「そう。私が経験あるのは、合宿とかやってて、びしょびしょの干すじゃないですか。で、次の稽古でも濡れてるじゃないですか」
──「濡れてます濡れてます。」
露木:「でも、洗うと、次の稽古の時には乾いちゃってるんですよ、意外と」
──「なるほど。」
露木:「それは塩分とかがあって…塩分は水分を抱きたがってるんですよね。だから、発散しない。そういうのを取ってあげて、水だけだとどんどん蒸発するんだけど、塩分が邪魔して、水分を逆に抱こうとしているので、乾きが悪いのです」
科学的な理由:
汗に含まれる塩分や皮脂は水分を保持する性質があるため、洗わずに干すと乾きが悪くなります。
洗浄することでこれらの成分が除去され、純粋な水分だけになるため蒸発が早くなるのです。
風の当て方(最重要ポイント)
扇風機やサーキュレーターを使う場合、風の当て方が重要です。
──「風の当て方とか特にないですか?」
露木:「ああ。さすがですね。こちら側から当ててあげます」
──「内に向けてですか?」
露木:「そう。内側に向けてです。特に顎方面に向けて当ててあげると、風が流れていくので」
- 内側から風を当てる(外側からではない)
- 顎部分とおでこ部分に重点的に(最も厚い綿の部分)
- 扇風機やサーキュレーターを使用
- 風通しの良い場所に干す
- 直射日光は避ける(革が傷む)
露木:「顎とおでこが一番厚い綿なので、そこにばーっと当ててあげる感じだと風が流れていって乾いてしまいます」
干し方
S字フックを使って吊るすのが最適です。
露木:「S字かんで吊すのが一番です」
──「あそこに吊してあるような。」
露木:「そうですね。ああいう感じに吊してあげます」
- S字フックで面紐を引っ掛けて吊るす
- 風通しの良い場所を選ぶ
- 直射日光は避ける
- 室内干しでも扇風機があれば十分
面紐の洗い方と注意点
面紐は外さずに洗える
──「洗う時は、この辺のものは外してあげた方がいいですか?」
露木:「一緒に洗いますね。一緒でも全然問題ない」
──「面紐も?」
露木:「面紐も結構汗が染みているので、一緒に洗ってあげてもいいのかなと」
面紐の洗い方:
・面と一緒に洗ってOK
・あまり汚れていないので、水でしっかり流すだけでも良い
・こするよりも水で流す方が色落ちしにくい
閂(かんぬき)の破損に注意
閂(かんぬき)とは、面の表側にある補強部分です。
この部分は汗を吸収しやすく、傷みやすい箇所でもあります。
露木:「裏からするとここに一番汚れがたまりやすい。表側には、ここに閂というのがあるのですけども、これが一番傷むというか、ここに汗が吸収されて」
──「切れる方がいらっしゃるって聞いたことがあります。」
露木:「結構切れるんですよね。」
閂が切れやすい時期と理由
露木:「今の季節、この花粉が出てくる季節が一番乾燥していて、かぴかぴに何回も濡れては乾き濡れては乾きで、結構傷んでいるんですよ。で、急激に水をバンと含むと膨張するので、自然にパツンと切れてしまう。で、これから稽古やって大量に汗をかくと、この閂が稽古やっている途中にパツンと切れたり」
閂が切れやすい時期:
・春先(花粉の季節)
・乾燥している時期
・濡れと乾燥を繰り返した後
💡 閂が切れてしまった場合は、防具店で修理してもらいましょう。そのまま使用すると面全体の破損につながります。
実験に使用した面について
今回の解説で使用した面は、露木社長の息子さんが実際に使用していたもので、14〜15年前の尚武道製です。
露木:「かなり年季入ってるでしょ」
──「あ、これ、閂が切れてしまっています。」
露木:「そう。切れてます。閂はちょっと上からもきているので、これは防具屋さんに留めてもらうといいかもしれないですね」
15年使用しても型崩れしていないことから、正しい手入れと保管をすれば、面は長く使えることがわかります。
露木:「これは実験用で。でも形崩れないですよね、あんまりね」
──「いい形ですよね。」
露木:「いい形。中学生とかが好きそうな感じですね」

まとめ:剣道面の手入れで大切なポイント
- 洗剤:中性洗剤を使用(台所用やおしゃれ着用)
- 水温:30〜35度(体温程度)
- 浸け置き:約5分(気泡が止まるまで)
- 面縁:長時間の浸水は避ける
- すすぎ:内側からしっかりと
- 脱水:縦型洗濯機で1分(バスタオルで固定)
- 乾燥:内側から風を当てる
- 干し方:S字フックで吊るす
- 直射日光:避ける
- 乾燥時間:脱水ありで約1日半
よくある質問
Q1. お風呂の残り湯で洗ってもいいですか?
A. いいえ、残り湯は使用しないでください。汗と同じ成分が含まれているため、新しい水を使用することをおすすめします。
Q2. ドラム式洗濯機でも脱水できますか?
A. いいえ、ドラム式洗濯機は使用できません。縦型洗濯機のみ使用可能です。
Q3. 面縁が濡れてしまったらどうすればいいですか?
A. すすぎの際に多少濡れる程度なら問題ありません。ただし、長時間水に浸けることは避けてください。
Q4. どのくらいの頻度で洗えばいいですか?
A. 使用頻度にもよりますが、月1〜2回程度が目安です。臭いが気になる場合はもっと頻繁に洗っても構いません。
Q5. 洗濯機がない場合はどうすればいいですか?
A. バスタオルで水気を吸い取り、扇風機で風を当てながら干してください。脱水なしの場合は約2日半かかります。
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関連動画シリーズ
「剣洗」秘伝の技シリーズでは、他にも剣道防具の手入れ方法を詳しく解説しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
- 第5回:剣道小手の手入れ方法
- 第6回:剣道面の手入れ方法(本記事)
- 第7回:面縁の修繕方法(次回予定)
BUSHIZO TVチャンネルでは、剣道に関する様々な情報を動画で配信しています。
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おわりに
今回は、剣道面の正しい手入れ方法について、剣道防具専門クリーニング「剣洗」の露木社長に詳しく教えていただきました。
金属や革がついている面は、「どうやって洗うのか?」「自分で洗えるものなのか?」と思われがちですが、
面縁を長時間水に浸けないことに気をつけさえすれば、案外簡単に洗えることがわかりました。
また、バスタオルでくるめば洗濯機で脱水できることや、
洗った面の方が稽古後の濡れた面よりも早く乾くという事実も驚きでした。
次回は、面縁の修繕の仕方について、引き続き露木社長に解説していただく予定です。
どうぞお楽しみに!
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