初心者でも安心!正しい剣道着・袴の着方完全ガイド - 失敗例と対処法も解説
公開日:2025年12月11日
剣道を始めたばかりの初心者にとって、剣道着と袴の着方は最初の難関です。特に袴の紐の結び方や、道着の襟の整え方に戸惑う方が多くいらっしゃいます。
しかし、正しい着装は剣道において非常に重要です。なぜなら、昇段審査では技術だけでなく、着装の美しさや礼儀作法も審査対象になるからです。正しく美しい装いは、剣道家としての心構えと姿勢を表すものなのです。
この記事では、剣道初心者の方でもすぐに実践できる、剣道着と袴の正しい着方を写真付きで詳しく解説します。よくある失敗例とその対処法、美しく着るためのコツまで、現場で培った知識を余すことなくお伝えします。
目次
- 剣道着と袴の基本知識
- 道着の正しい着方【ステップ解説】
- 袴の正しい着方【ステップ解説】
- よくある失敗例と対処法
- 美しく着るための重要ポイント
- サイズ選びのポイント
- 素材と用途別の選び方
- Q&A:着装に関するよくある質問
剣道着と袴の基本知識 - まず何を着るのか理解しよう
剣道の稽古では、上半身に道着(どうぎ)、下半身に袴(はかま)を着用します。これらは単なる運動着ではなく、武道の精神性を体現する重要な装束です。
道着について
道着は、動きやすさと吸汗性を重視して設計されています。着用前には必ず以下をチェックしましょう。
- ほつれや破れがないか
- 襟元がヨレていないか
- 紐がすべて揃っているか(内側・外側に各2本、計4本)
✓ 下着の着用について
本来、剣道着の下には何も着用しないとされていますが、現代では衛生面や寒さ対策の観点から、薄手の下着やTシャツを着用する方も増えています。
重要:袖や襟元から見えないようにすることがマナーです。特に冬場の防寒対策では、シャツの袖が道着からはみ出さないよう注意しましょう。
道着の基本構造
袴について
袴は、道着を着た後にズボンのように着用します。前後の見分け方を覚えておきましょう。
- 前側:長い紐が2本付いている
- 後ろ側:「腰板(こしいた)」という硬い板が付いている
袴のヒダが持つ意味
袴の前面には5本のヒダが入っています。これは、儒教の「五倫五常(ごりんごじょう)」の教えを象徴しています。
- 五倫:父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序、朋友の信
- 五常:仁、義、礼、智、信
さらに、後ろにある1本のヒダは「誠の道」を示し、武士道精神や礼節の大切さを象徴しています。袴は単なる衣服ではなく、剣道の精神性を体現する重要な要素なのです。
袴の前面と後面の違い
道着の正しい着方【ステップ解説】
道着には内側・外側に計4本の紐が付いています。正しい順序で着用することで、襟元が美しく整い、稽古中も着崩れしにくくなります。
- 紐が絡まっていないか確認
- 道着の前後・表裏を確認
- 鏡の前で着用すると確認しやすい
手順1:袖を通す
まず両袖に腕を通します。
肩の位置をしっかりと合わせ、袖が引っ張られていないか確認しましょう。袖は手首が隠れる程度の長さが理想的です。
手順2:内側の紐を結ぶ
右身頃の内側にある紐と、左脇腹にある紐を蝶結びにします。
- 結び目は体の左側に来る
- 紐がねじれていないか確認
- 適度な締め加減(苦しくない程度)
手順3:外側の紐を結ぶ
左身頃を上に重ね、左身頃の紐と右胸下にある紐を蝶結びにします。
- ❌ 左前(左が下・右が上)で着る → 亡くなった方の着方なので絶対NG
- ❌ 縦結びにする → 見た目が悪く、礼を欠く行為
- ❌ 結び目が正面に来る → 横(脇腹側)に結び目を持ってくる
手順4:襟元の最終確認
鏡で以下の項目を確認しましょう。
- ✓ 右前(右身頃が下、左身頃が上)になっているか
- ✓ 襟元が首の後ろにぴったり付いているか
- ✓ 左右のバランスが整っているか
- ✓ シワや歪みがないか
- ✓ 結び目が横結び(蝶結び)になっているか
正しく着用した道着の襟元
袴の正しい着方【ステップ解説】
袴の着用は初心者にとって最も難しい部分です。前紐と後紐の結び方を順を追って解説します。
- 前後を間違えないよう確認(前=長い紐、後=腰板)
- 紐が絡まっていないか確認
- ヒダを整える
前側の着用手順
手順1:袴を履く
袴をズボンのように左右の穴に片足ずつ足を入れます。
真ん中の仕切りを確認し、必ず左右に分かれて足を入れましょう。両足を同じ側に入れないよう注意が必要です。
手順2:帯紐の位置を決める
長い前紐を持ち、帯紐を腰の位置に当てます。
- 男性・一般:へその下あたり
- 女性・子ども:ウエストの最も細い位置(やや上でも可)
手順3:背中で交差
前紐を背中側で交差させます。
帯が下がらないように、紐をキュッと締めることがポイントです。この時点でしっかり締めておくと、後の作業が楽になります。
手順4:前でX字に交差
前に戻した紐を前で交差させ、「X」の字を作ります。
そして、「X」の下を通った紐を折り曲げ、2本とも後ろに回します。
手順5:背中で蝶結び
一番外側にある紐を、腰を通る紐と背中の間に通します。
慣れていないと紐を通すのが難しいかもしれませんが、落ち着いて作業しましょう。キュッと締めて、蝶結びにします。
手順6:腰板のヘラを差し込む
腰板を持ち上げ、裏にある「ヘラ」を腰と紐の間に差し込みます。
ヘラは上から下に向かって差し込みます。しっかり差し込まないと、稽古中に腰板が落ちてしまいます。
後ろ側の着用手順
手順7:後紐を前に持ってくる
短い後ろ紐を前に持ってきて交差させます。
手順8:固結び
上になった紐をお腹と全ての紐の間に通します。
キュッと締めて、固結び(真結び)にします。蝶結びではなく、ほどけにくい固結びにするのがポイントです。
手順9:余った紐の処理
余った紐を脇腹の紐の下にくぐらせ、腰板の後ろに入れ込みます。
紐が外側から見えないように、きれいに処理しましょう。
手順10:最終確認
横から見て、前下がり・後ろ上がりのシルエットになっているか確認します。
- ✓ 裾が前下がりになっている
- ✓ 紐が外から見えていない
- ✓ 腰板がしっかり固定されている
- ✓ ヒダが整っている
- ✓ 道着にシワがない
よくある失敗例と対処法

初心者がよく陥る失敗例とその対処法をまとめました。これらを事前に知っておくことで、スムーズに着装できるようになります。
失敗例1:道着の襟元が浮いてしまう
| 原因 | サイズが大きすぎる、または紐の締め方が緩い |
|---|---|
| 対処法 | 適正サイズの道着を選ぶ。紐を結ぶ前に、襟を首の後ろにしっかり当ててから結ぶ |
失敗例2:袴の裾が長すぎる/短すぎる
| 長すぎる場合 | 足元に絡み、転倒の危険がある。帯の位置を下げるか、適正サイズに買い替える |
|---|---|
| 短すぎる場合 | 足の動きが丸見えになり不格好。適正サイズに買い替える必要がある |
| 理想の長さ | 足の甲が隠れ、つま先が少し見える程度。くるぶしが完全に隠れる長さ |
失敗例3:袴が前上がりになってしまう
| 原因 | 帯の位置が高すぎる(腰より上で結んでいる) |
|---|---|
| 対処法 | 帯をへその下(腰の位置)で結ぶ。女性や子どもの場合も、極端に高い位置は避ける |
失敗例4:稽古中に袴がずり落ちる
| 原因 | 前紐の締めが緩い、またはヘラの差し込みが浅い |
|---|---|
| 対処法 | 前紐を背中で交差させる際にしっかり締める。ヘラを確実に差し込む |
失敗例5:紐の結び目が縦になってしまう
| 原因 | 蝶結びの手順が間違っている |
|---|---|
| 対処法 | 結んだ後、輪が縦ではなく横(左右)に向くよう調整する。繰り返し練習して自分の結び方を見つける |
失敗例6:道着の背中にシワができる
| 原因 | 袴を履く前に道着が整っていない |
|---|---|
| 対処法 | 袴を履いた後、背中や脇から道着を引っ張ってシワを伸ばす。袴の下や横から道着を整える |
美しく着るための重要ポイント
正しく着るだけでなく、美しく着ることで、剣道家としての品格が大きく向上します。以下のポイントを押さえましょう。
ポイント1:姿勢を正して着る
背筋を伸ばし、正しい姿勢で着装することで、道着や袴が自然に美しく整います。猫背の状態で着ると、襟元が崩れやすくなります。
ポイント2:鏡でこまめに確認
着装の各段階で鏡を使って確認しましょう。特に以下の項目は重要です。
- 襟元の左右対称性
- 袴の裾の前下がり具合
- ヒダの整い方
- 全体のシルエット
ポイント3:道着の袖の長さ
小手をはめた時に、手首と小手の間が約1cm空く程度が理想的です。袖が短すぎると肌が見えすぎ、長すぎると小手の装着に支障が出ます。
ポイント4:袴のヒダを意識する
前面5本、後面1本のヒダをしっかり整えることで、袴全体の見栄えが大きく変わります。稽古前に必ずヒダを確認し、乱れていれば直しましょう。
ポイント5:定期的なメンテナンス
どんなに正しく着ても、道着や袴が傷んでいては美しく見えません。定期的に以下を確認しましょう。
- ほつれや破れの修繕
- 適切な洗濯と乾燥
- アイロンがけ(特に袴のヒダ)
- 紐の劣化チェック
サイズ選びのポイント
いくら正しい着方を知っていても、サイズが合っていなければ美しく着ることはできません。適切なサイズ選びが重要です。
道着のサイズ選び
剣道着は一般的な洋服とは異なり、号数(00号〜5号)で表記されます。サイズ選びでは以下の点を考慮しましょう。
| 考慮すべき点 | 詳細 |
|---|---|
| 身長 | 基本となる目安。例:身長160cmで2号が標準 |
| 体格 | がっしりした体格の方は1サイズ上げることも検討 |
| 腕の長さ | 袖が手首を覆う程度が理想 |
| 性別 | 女性は男性基準より小さめを選ぶことが多い |
⚠ 注意点
綿素材の道着は洗濯後に縮むことがあります。初回購入時は、やや大きめを選んで洗濯後のサイズ感を確認することをおすすめします。
袴のサイズ選び
袴のサイズは道着以上に重要です。長さが合っていないと、稽古中の動作に支障が出たり、転倒のリスクが高まります。
測り方
ウエスト(帯を結ぶ位置)からくるぶしまでの長さを測定します。この長さに基づいてサイズを選びましょう。
理想的な長さ
- ✓ 理想:足の甲が隠れ、つま先が少し見える程度
- ✓ 最低ライン:くるぶしが隠れる長さ
- ❌ NG:くるぶしが見える(短すぎ)
- ❌ NG:床を引きずる(長すぎ)
ネット通販を利用する場合は、必ずウエストからくるぶしまでの長さを計測してから注文しましょう。多くの剣道具専門店では試着サンプルを用意しているので、不安な方は来店して確認することをおすすめします。
素材と用途別の選び方
剣道着と袴には様々な素材があり、それぞれに特徴があります。用途に応じて使い分けることで、快適性と経済性を両立できます。
道着・袴の主な素材
| 素材 | 特徴 | メリット | デメリット | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| 綿素材 | 伝統的な素材 | 吸汗性に優れる 高級感がある 重厚感がある |
洗濯後の乾燥に時間がかかる 縮みやすい |
昇段審査 公式試合 演武会 |
| ジャージ素材 | 現代的な機能素材 | 軽くて動きやすい 洗濯が簡単 乾きやすい |
高級感には欠ける | 日々の稽古 初心者向け 夏場の稽古 |
| テトロン (化学繊維) |
ポリエステル系 | 安価で丈夫 通気性が高い 扱いやすい |
吸汗性は綿より劣る | 練習用 成長期の学生 複数枚必要な場合 |
用途別おすすめの組み合わせ
初心者・成長期の学生
まずはジャージ素材またはテトロン素材がおすすめです。扱いやすく、成長に伴うサイズ変更にも経済的に対応できます。
有段者・審査受験者
普段の稽古用にジャージ素材、審査や試合用に綿素材(正藍染)と、用途に応じて複数セットを持つことをおすすめします。
最近のトレンド
近年では、藍染風の化学繊維剣道着も登場しており、見た目は綿素材に近いながら、扱いやすさを兼ね備えた製品も増えています。公式行事にも対応できる品質のものもあるため、選択肢として検討する価値があります。
Q&A:着装に関するよくある質問

Q1:道着の下に何を着ればいいですか?
A:本来は何も着用しないのが正式ですが、現代では薄手の下着やTシャツを着用する方が多いです。重要なのは、袖や襟元から見えないようにすることです。特に冬場は、袖が道着からはみ出さない長袖のインナーを選びましょう。
Q2:袴の紐がすぐにほどけてしまいます
A:前紐は蝶結び、後紐は固結び(真結び)にするのが基本です。それでもほどける場合は、以下を確認してください。
- 紐を結ぶ前にしっかり締めているか
- 結び方が緩すぎないか
- 紐が劣化していないか(古い紐は買い替えを検討)
Q3:洗濯後、道着が縮んでしまいました
A:特に綿素材の道着は縮みやすい性質があります。以下の対策を試してください。
- 洗濯後、濡れた状態で引っ張って形を整える
- 陰干しで自然乾燥させる
- 購入時に1サイズ大きめを選ぶ
- 初回洗濯は手洗いまたはネット使用で優しく洗う
Q4:女性の場合、着方に違いはありますか?
A:基本的な着方は男性と同じですが、以下の点が異なる場合があります。
- 袴の帯位置を若干高め(ウエストの細い部分)にすることが多い
- 道着のサイズは男性基準より小さめを選ぶ
- 体型に合わせて紐の締め加減を調整する
Q5:子どもに教える時のコツはありますか?
A:以下の方法が効果的です。
- 最初は大人が手伝いながら、段階的に自分でできるようにする
- 「右前」を「右手を懐に入れる形」と教えると覚えやすい
- 紐の結び方は、まず普通の靴紐の蝶結びから練習する
- 鏡を使って自分でチェックする習慣をつける
- 成功したら褒めて、着装への意識を高める
Q6:稽古前に必ずチェックすべき点は?
A:以下の項目を毎回確認しましょう。
- 襟元が「右前」になっているか
- 袴の裾が「前下がり」になっているか
- 紐がしっかり結ばれているか
- ヒダが整っているか
- 道着や袴にほつれや破れがないか
- 全体的にシワや歪みがないか
まとめ:正しい着装が剣道をワンランクアップさせる
剣道では、技術の向上だけでなく、礼節と身だしなみを大切にする心が求められます。剣道着・袴の正しい着方は、相手への敬意を表す基本であり、段位審査でも重視されるポイントです。
この記事でお伝えした内容をまとめると、以下のようになります。
- 道着の着方:右前(右が下・左が上)、蝶結びで結ぶ
- 袴の着方:前紐は蝶結び、後紐は固結び、裾は前下がり
- サイズ選び:身長だけでなく体格も考慮、試着が理想的
- 素材選び:用途に応じて使い分ける(稽古用と審査用)
- 日常のケア:定期的にほつれや破れをチェック、適切に洗濯
- 着装の確認:鏡で必ずチェック、先生や仲間にも見てもらう
「なんとなく着ていた」剣道着も、正しく整えるだけで見た目の印象が大きく変わり、風格や信頼感が増します。最初は時間がかかるかもしれませんが、繰り返し練習することで、自然と美しく着られるようになります。
剣道の稽古は、道場に入る前、道着を着る瞬間から始まっています。一つひとつの所作を丁寧に行い、心を整えることが、技術向上への第一歩です。
ぜひこの機会に、ご自身の着装を見直し、より美しく、より気持ちのこもった剣道を目指してみてください。正しい着装があなたの剣道を必ずワンランクアップさせます。
BUSHIZO渋谷ショールームでは、着装に関するご相談も承っております。
「自分に合ったサイズがわからない」「実際に試着してみたい」「着方を直接教えてほしい」など、お気軽にご来店・お問い合わせください。経験豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。
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