剣道 胴/道着/袴の手入れ方法
剣道防具専門クリーニング 武蔵坊「剣洗」の露木 幹也社長にお話をお伺いするシリーズの第3回目です。
前回の垂れの手入れ方法に引き続き、今回は、胴・道着・袴の手入れ方法を教えて頂きます。
最近は胴も結構臭い
──胴はさすがにそんなに?
露木「胴も結構汚れていますね…」
──胸の辺りですかね?
露木「そうですね。結構。胸の内側。ジャージ剣道着が出てきてから蒸れるんでしょうね、相当。
胸が結構ふやけてると言うか臭いみたいです。
昔は紐が臭かったんですけども、どちらかというと胸結構臭ってるよねというのが最近は多いですよね。
もしかして垂れもそういう感じなのかなって思います。ジャージの剣道着だと外に外に出てしまうので。
洗い方は、垂れと同じですね、この胸の辺りも胴の周りも、石けん水をシュシュシュとつけて、スポンジですっすっと洗います」
──洗う依頼が来るのは、胴の表側ですか?
露木「洗うのは、全部です。表も裏もきれいにという依頼です。
最初は、石けん水に10秒とか15秒くらい漬けます。
ファイバーとかプラスティックの胴はいいんですけども、竹胴とか生地胴はもう長時間漬けると絶対アウトなので、
石けん水をシュシュシュッと10秒ぐらいつけてすぐ取り出して、泡で洗ってあげて、裏も同じように洗います。
竹胴だと、隅っこや竹と竹の間に汚れが結構入っているので、それも石けん水とスポンジで洗い流します。胴を洗うのは、トータルでも5分以内にします」
露木「それから、すすぎ。他のものは何もつけないで、シャワーでバーっとすすぎます。
胴はあまり汚れていないように思われるかもしれませんが、胸の内側とか全体的にも意外と汚れてるんですよね。
でも、それも中性の石けんで、軽くすーっと洗うだけで結構きれいになります。
特に、竹胴と生地胴の場合、時間をあんまりかけてはだめで、短時間できっちり洗浄してあげるということですね。脱水はしないで、そのまま乾燥します」
──ここまでの、垂れと胴を洗う話の中で、石けんが出てきましたが、どちらも同じもので大丈夫ですか?
露木「はい。大丈夫です」
どんな洗剤をつかえばいい?
──では、実際に一般家庭にある洗剤としてはどのようなものを使ったらいいでしょうか?
露木「あれば、中性の石けんですね。なければ、食器用の洗剤が、意外と中性なので、いいかもしれません。
半分くらいに薄めて使えば十分です。汗と皮脂の部分がはがれるだけでいいので、ほんとにちょっとだけで大丈夫ですね。大量には必要ないです。
ただ、蛍光染料剤が入ってる石鹸は絶対NGです。蛍光染料剤といって、白く見せる染料みたいなものが入っていて、白く見せる石鹸があるんですよ。
あと漂白剤が入っているものもNGです」
露木「微妙なものが、酵素入りの洗剤です。酵素分はできればないほうがいいです。
酵素入り石鹸というものも結構ありますが、酵素は確かに皮脂にはよく効くのですけども、鹿革の部分が酵素でダメージ受ける可能性があります。
ですから、酵素と漂白剤と蛍光染料剤や蛍光増白剤等が入ってない石鹸を使えばOKだと思います。それは道着に関しても袴に関しても同じです」
道着・袴の正しい洗濯法
──それでは、道着や袴は、実際どういう風に洗えばいいですか?私などは、昔はただ洗濯機に入れてしまうだけだったのですが。
露木「極力、洗濯機をまわさない。手洗いが一番」
──例えば、藍染めの剣道着はいかがでしょうか?洗濯機ではなくて手洗いですか?
露木「もう、手洗いが一番ですね。長持ちするし、色あせも少なくて済むし。
石けんは少量で。蛍光増白剤が入っている石鹸だとどんどん白くなってしまうし、漂白剤が入っているものも白くなってしまうのでNGです。
できれば、中性の石けんで手洗いがいいですね。洗濯機でまわしてもいいですけども、
すれたり、こすれたりするところが先に色が抜けて見えちゃったりするので、色ムラになったりする原因になるということはあります」
──洗濯機でも、水流が『弱』というか、あんまり強くまわさないという機能もありますが?
露木「あ、そうですね。もし洗濯機に入れるということでしたら、汚れたところが外に出るように畳んで、
ネットに入れて、剣道着は動かさないような形にして、周りの水だけが動くようにして洗うといいですね。
脱水も、1分かからないくらい、30秒くらいでいいかな。それで干せば、袴のラインが消えにくかったりしますね」
──お母さん方のように、道着を1着ずつ手洗いする時間が無いという人たちが多くいるかと思いますが、そんな中でもなるべく傷まないようにするには?
露木「ネットに入れて、弱流でですね。そんな長い時間はいらないと思います。
5分つけておいて、それから5分くらいで洗い終えて、5分くらいすすぎで、汗や皮脂は十分とれると思います」
──私も、綿袴を畳んでネットに入れて洗う時がありますが、あまり袴の線が消えていないです。
露木「そうですね。でも、ネットに入れずそのまま洗濯機に入れてガラガラ回してしまうと、線がどこに行ったか分からなくなってしまいます。
そうすると、またプレスで線を取り直さなくてはならないので大変です。
なので、うちでは、洗う前に1回線をきれいにつけておいてから、手で洗って、あとでまたプレスするという形をとっています。
特に新品の袴について、「表面の色だけとってください」と言われる時は、先に5分くらい熱プレス機を当てて、線を決めてしまいますね。
線が決まってから、表面の藍のカスみたいなものをきれいに手洗い洗浄します。それから、またプレスしてあげると、袴の線はずっと残る感じになります。
最初のうちにビシッとやっておくといいですよね。そういうやり方もあります」
露木「だから、ご家庭でも、買ってきた最初のうちに、一度プレスしてから履くと、かなり違います。まだしつけ糸がついているうちですね。
そうすると、袴の線が取れずに残りやすくなります。そのまま洗濯機で回してしまってからでは難しくなってしまいます。
回すと色ムラになってしまったりしますし。「1回目洗ったら色ムラになっちゃって…」という問い合わせがよく来て、いろいろな直し方をします。
まあ、そのまま履いても、使っていけばなじんでくるのですけど、最初はどうしても色のコントラストが変わってしまうのでね。
なので、手洗いで、また洗濯機を使うとしても、畳んでそっと洗ってあげるようにすればいいのではないでしょうか。
それだけでも汗や皮脂は十分取れるのでね。石けんを入れるとするなら、極力中性の石けんを 入れるという形ですかね」
一番臭い小手の洗い方!
──今、全部の防具の中で一番多いのはおそらく小手かと思いますが、いかがですか?
露木「そうですね。完全に小手ですね」
──小手を自分で洗う時に、一番注意することは何ですか?
露木「一番は…」
プロならではの豆知識に目からウロコ
今回は、胴と、道着・袴の手入れ方法を解説いただきました。
解説動画はこちら→ 胴編 https://www.youtube.com/watch?v=8ki9aCai4U0
道着・袴編 https://www.youtube.com/watch?v=33VdEPj_JSs&t=132s
最初は、「胴を洗って大丈夫なのだろうか?」と半信半疑でしたが、水につける時間を短くしたり、使う洗剤を工夫したりすれば、いろいろな素材の胴をすっきり洗えることがわかりました。
袴については、買ってきてすぐ、袴の線をアイロンでしっかりつけるといいというプロならではの豆知識も教えて頂けて目からウロコですね。
次回は、防具の中で最も汚れているであろう小手の手入れ方法です!お楽しみに!!
関連記事
「剣洗」秘伝の技シリーズ(全9回)