剣道の垂れも洗えることを知ってほしい
今回は、剣道防具専門クリーニング 武蔵坊「剣洗」の露木 幹也社長に、剣道垂れの手入れ方法をお話し頂きました。
垂れは意外に汚れていることや、洗い方・干し方など、知っておくと大変便利なことが盛りだくさんです。
意外に多い垂れクリーニング
──一番防具の中で洗いたいというニーズが多いのは、面か小手でしょうか?
露木「面か小手がだいたい同じ比率的に同じくらいの数ですかね。小手のほうが若干多いかもしれません」
──胴と垂れはあまり多くないのでしょうか?
露木「それが、結構垂れも来るんですよね。垂れは『まあ大丈夫かな』っていうイメージあるじゃないですか。肌に直接触れてないし。でも、意外と垂れも多いです。垂れも意外と気にするんだなあと思います」
──どのあたりを洗いたいという方が多いでしょうか?
露木「垂れはもうほぼほぼ帯の部分というか、腹に当たる部分。ジャージ剣道着を着ている子たちは、やっぱりここに汗がついているんでね。垂れって、面や小手とかと違って、垢や皮脂が直接ついているわけではない。でも、目立たないんですけど、意外と汚れてるみたいな。目には見えないんだけれども、意外と汚れているね、という感じなんです」
──袴ごしに浸透しているという。
露木「そうですね。浸透しているという。皮脂分はないんだけど、汗分は結構浸透しているんだなあと思います」
──洗うときは、どのようにするのでしょうか?
露木「帯の部分は、石けん水を振ってあげて、おいておきます」
──表部分はいかがでしょうか?
露木「表部分は、人のくせによりますが、ここをさわります。今度ご自分のを見ていただくと、意外とちょっと色変わりしていたり、意外とここに皮脂がついていたりするんです」
──なるほど。私も結構さわりますよ。
露木「注意して見ると汚れの具合が分かるんですけど、一般的に見てるとまあ変わらないかなという感じですかね。
あとは、こどもたちが結構ここにドリンク剤をこぼしていて、名札の色がここにビヤ~と跡がついているとかあったりするんですよね(笑)」
──結構そういう垂は多いんでしょうか?
露木「アミノ酸とかがスポーツドリンクに入っていると、染料に悪さするというか変色に繋がってきたりもします。『ジュースこぼしたのかな』という」
──そういった汚れはどのように落とせばよいでしょう?
露木「それも、石けん水をかけてあげます。同じですね、これも」
──ひもはどうですか?
露木「紐も結構汚れがついています。紐の部分はブラッシングしてあげても、タワシとかでこすってあげてもいいですね。
軽く中性の石けん水を振ってあげて。あとは全体をずぶずぶと入れてあげて。同じですね。小手とか面と同じです」
──基本は全部出終わるまででしょうか?
露木「そうですね。出終わったら、今度はすすぎます。ちょっと汚れているところがあれば、スポンジで泡立てて、軽く撫でてあげて」
──揉んだりとかまでは必要ないでしょうか?
露木「ないですね。小手の手の内の部分だけは、汗が浸透しているので、洗いながら揉んで、どんどん水を流して出してあげる。あとは揉んだりしなくて十分大丈夫かなと思います」
──(揉んだりする)必要はないという感じですかね?
露木「そうですね。食べこぼしとかとは違って、例えば食べこぼしの油とかシミがついているわけではなく、皮脂と塩分なので」
──漬けて、その石けん水が染み込みさえすれば…
露木「そうです。汚れが出て行く作用さえ促してあげれば、もう充分きれいになるっていう」
──垂れだと、今はどうか分かりませんが、昔、昇段審査の時にチョークか何かで(番号を)書かれてしまうと、しばらく落ちないみたいなことがありましたが…
露木「そうですね。バンバン叩いて落とすしかない(笑)
でも、やっぱりあれも軽く軽くですよ、シュシュシュとやってあげて漬けてあげると、もう汚れが浮いてくるので、スポンジで軽く撫でてあげる。
そして、バランスよくタオルで包んであげて脱水を1分」
──そして、日陰に干す…
露木「そうですね。」
──スポンジとブラシなら、どちらのほうがいいですか?
露木「スポンジですね。
ブラシは、面の顎の部分やほおの部分に皮脂がべっとりついてしまっているようなときに、ちょっと石けんをつけて軽くサッサッととってあげる時に使うくらい」
──ブラシを強くやりすぎると傷めちゃうのもあるんですか?
露木「擦れちゃうと、『白化』と言って、折れ込んである小さな繊維がもやもやと出てきちゃう」
──ほぐれちゃうというか。
露木「そうそう。そうすると、白く見えちゃう。色はとれてなくても、繊維が立っちゃうというか、繊維を出しちゃうというか」
──毛羽立ちみたいな?
露木「そうそう。毛羽立ちみたいな感じ。そうすると、白く見えてしまう『白化現象』が起きちゃうので。そうするといけないので、スポンジのほうがいいですね。
汚れがちょっときついなと思うときだけ、少し歯ブラシみたいなものでもいいし、タワシでもいいんで、軽くサッサッと取り除いてあげる。
その時水をジャンジャンかけてあげるとどんどん流れていくので。
逆に、汚れているのを擦って中に入れちゃうのがちょっと怖いので、水をかけながらどんどんどんどん流しこんであげるという。
もう流すって感じですよね。水量を使って流してあげるっていう感じ。
それが一番臭いの元も取れるし、汚れの部分も再付着しないので、どんどん流すといいです」
防具によって干し方は?
──干し方ってどうしたらいいんですか?
露木「垂れはもう、こういう感じに干してあげる」
──洗濯バサミでもいいでしょうか?
露木「洗濯ばさみでもいいですし、形が崩れない程度にこうやって」
──紐はだら~んと?
露木「だら~んとしてですね。で、紐の部分だけは、最後アイロンをかけてあげればきれいになるので、締まるのもおさまりがよくなるというかギュッと締まるようになります」
──面は面金のところで吊すということですが、小手だったらどうですか?置いておいた方がいいですか?それとも、吊してあげた方がいいでしょうか?
露木「いや、小手も吊した方が。筒が上でも下でも」
──小手頭が下だと水分がどんどん下にたまってくるイメージもあったんですけど…
露木「そんなことないかな…こんな風に立てても。ようは風が一番入りやすければ、どういう向きでもいいのかなって」
──小手紐を洗濯ばさみではさんであげてもいいですよね。
露木「そうですね。あとは、例えばこんなハンガーがあれば、これでもいいですよね」
──「そうしたら、左右に干せば…」
露木「そう。左右に。こういう形でも問題ないのかな」
──これが一番わかりやすいかもしれない。反対側も同じように干して…
露木「そうそう。こういう感じに干してもらっても全然問題ないですね」
最近は胴も臭い?
──胴はさすがにそんなに?
露木「いや胴も結構…」
──胴は胸のあたりが?
露木「そうですね。結構胸の内側が…」
最近は胴も臭い!?
今回は、垂れの手入れ法について解説いただきました。
解説動画はこちら→ https://www.youtube.com/watch?v=eeUpFhh-1gw
このように、垂れをクリーニングしてもらうと、気持ちも新たに稽古に向かうことが出来ますね。
次回も引き続き、剣洗の露木社長からお話をお伺いします。
次のテーマは、「胴・道着・袴の手入れ方法」です。
お楽しみに!!
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