孤立奮闘するあなたにエールを。複業剣士、教士七段・谷ひとみさん

2018年9月29日 • インタビュー • Views: 5232

本業のかたわら、土日は女性限定・完全予約制のエステサロン「サロン・ド・クレール」を経営する谷ひとみさん。無我夢中で稽古し華々しい実績を残した女性剣士は、現在はエステとアロマの「複業」に取り組んでいた。

 

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プロフィール:谷ひとみ

鹿児島県出身、神奈川県相模原市在住。東海大学体育学部卒業。本業のかたわら、女性限定・完全予約制の自宅エステサロン「サロン・ド・クレール」を経営。エステ実技&アロマ各種講座、資格取得のスクールも併設。JEA認定フェイシャルエステティシャン、JAA認定アロマトップインストラクター、剣道教士七段など各種資格を持つ。

 

学生時代はインターハイ(個人)出場 、玉龍旗優勝、関東女子学生剣道大会(団体)優勝、関東女子学生剣道選手権大会(個人)準優勝、全日本女子学生剣道大会(団体)優勝、全日本女子剣道選手権大会(神奈川県代表)出場。
卒業後は女子社会人剣道大会優勝(現・関東女子実業団剣道大会の前身)、全国家庭婦人剣道大会(東京都代表)出場などの華々しい戦績を残す。

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はじめに

今回の記事には、2つのテーマがある。
まず、いま注目を集める「副業」や「複業」。副業は会社勤めなど本業を持つ人がサイドビジネスとして行うこと、複業は本業を複数持つことだ。谷さんは副業と複業の中間くらいに位置する方だ。これらの実践者として、谷さんが心がけていらっしゃることや大変だったことについて伺った。これから副業・複業を考えている方には、参考になるはずだ。

また、そもそも「なぜ自宅開業をしたのか?」。そこには、谷さんの人生観にも繋がる強い想いがあった。人生100年時代、私たちはこれから少なからず「自分が本当に好きなこと」を探し、向き合わなければならない。子育てがひと段落一歩手前の谷さんは、どうやって「好きなこと」を見つけ、向き合ってきたのだろう。

会社に許可を取った上で、休日にエステ事業を経営

谷さんは現在ダブルワークを実践中。本格的な開業も視野に入れつつ、現在は土日をメインにエステサロンを経営している。
2018年は「副業元年」と言われ、副業を解禁する会社も増加。しかし、「所得が一定額を越えた場合に確定申告が必要」「本業に支障をきたさないこと」など、気にかけなくてはいけないことも多い。

「休日に自分がやりたい事業をしておりますので、平日のお仕事に関しては、より一生懸命取り組むよう心がけております」谷さんのこの言葉は、副業・複業実践者はぜひ心に留めておきたい考え方だ。

※自宅の玄関に並ぶアロマオイル

 

「事業内容はフェイシャルエステがメインですが、アロマセラピーの講師も行なっています。旦那さんの転勤や親の介護など、いきなり今住んでいる場所を離れなければいけないことが女性にはあると思います。そんな方々が資格を持つお手伝いができればと考え、講師業も始めました。」

※谷さんが販売する「勝ちトンボ」のアロマグッズ。 トンボは真っ直ぐに進むことから「勝ち虫」とされている。 陶器にアロマを垂らし身に付けることでリラックスできる。

 

ヤクルト化粧品が自宅開業のきっかけ

退職後に事業を持ちたい、副業をしたいと思っても、「何をやるか」がなかなか定まらない方も多いのではないだろうか。谷さんの場合は、ヤクルト化粧品での仕事がきっかけだったそう。

「大学を卒業後は、剣道も続けたかったので物流の丸運に就職しました。剣道部も活発な会社で、現在の関東女子実業団剣道大会の第一回大会で運よく優勝させていただきました。しかし、両親の体調が思わしくなく、一度鹿児島に帰ることに。その後、結婚して関東に戻り、ヤクルト化粧品のお仕事を始めました。」

※谷さんのエステサロンでも取り扱いのあるヤクルト化粧品

 

「最初は、ヤクルトレディのお仕事をするつもりだったんです。ヤクルトには保育所があったので、同じママたちが働く職場を選びました。
でも、ちょうどヤクルト化粧品のお仕事があり、やってみないかとお誘いいただいたんです。いつまでも綺麗でいたい女性たちに寄り添う美容の世界でお仕事ができるならと、お誘いを受けました。主なお仕事内容は、ヤクルトを愛飲している個人宅や企業を訪問し、化粧品の営業やエステ施術を行うことです。東京に移ってからは、ありがたいことに育成マネージメントも経験させていただきました。」

ヤクルト化粧品ではエステのスクールに通い、さらに化粧品の研究所の研究員方々から直接話を聴く機会も多かった。化粧品に対する商品理解はとても深い。この頃の経験をベースに自宅開業に踏み切ったそう。

 

※自宅のエステスペース。天井から優しい陽の光が入る

 

”頑張ったね”と、誰かに言って欲しい

就職、結婚、子育て、子離れ…女性はライフステージによって環境が劇的に変わることも少なくない。「この人こそロールモデル」という人もおらず、「本当にこの道でいいのか」と人生に迷う方も多いのではないだろうか。選んだ道を必死に進んで、すごくすごく頑張っても、誰も「頑張ったね」なんて言ってくれない。
谷さんも、そんな女性の一人だったそう。

「私なりに、すごくすごく頑張ったんですよ(笑)家事や育児の手抜きとか、業績が落ちたとか思われたくなくて、当たり前ですけど、どんなに頑張っても、誰かに頑張ったねって言ってもらえないことが多いんです。
でも、細くも長く好きなエステを長く続けてこれてるのは、夫や通い続けていただいているお客様のお陰。本当に感謝しています。」

これは、誰しも経験があることではないだろうか。どんなに頑張っても、誰にも気づいてもらえない時がある。まだ息子さんが赤ちゃんの頃、入退院を繰り返す育児疲れからお医者さんに「少し休んだ方がいい」と言われたこともあるそう。

「だから、家事に育児にお仕事に、頑張る全ての女性に、リーズナブルな価格でエステを提供するために、自宅サロンをオープンしたんです。おしゃれな街の大手のサロンだと、敷居が高くていけないという方もいらっしゃると思いますが、自宅サロンだと身近だし、気軽にきていただけるかなって。」

頑張りすぎて、「私、なんのために頑張ってるんだっけ?」とふとわからなくなる時もある。そんな時に、たとえ一時間でもいい。頑張った自分を労わり、明日への活力を取り戻してほしい。そんな女性のためのエステサロンが「サロン・ド・クレール」だ。

「いつでも気軽に来ていただきたいですし、誰もが集えるような明るい場所にしたいです。」そう話す谷さんの笑顔は、人を惹きつける華やかさと美しさがある。口コミで広まり、谷さんの施術を受けるため遠方から足を運ぶお客さんもいるほどだ。

ちなみに、私も今回、取材をかねてエステ体験をさせていただいた。スチーマーで毛穴を開き丁寧にクレンジングとマッサージを体験。最近、不眠気味だったのにも関わらず、いつの間にか寝てしまったほど。頭の中が空っぽになり、ものすごくリラックスした。

高級ラインの化粧品、MTメタトロン化粧品でスキンケアをしていただき、肌がワントーン明るくピカピカになった。しかも、価格もとてもリーズナブルだ。

谷さんのサロンでは、こちらのMTメタトロン化粧品の取り扱いがほとんど。薬剤師さんが立ち上げた化粧品ブランドで、効果重視の最先端美容化粧品だ。特に谷さんと同年代の女性がもつ肌の悩みに、自信を持って応えられるそう。

>> メニューの一例
「美白&リフトアップ」ワンランク上のフェイシャルトリートメント
約75分/7,000円

ハリ、たるみが気になる方へのリフトアップコース
約70分/6,000円

しみ、くすみが気になる方へのブライトアップコース
約75分/6,000円

自宅開業のここが大変!

自宅開業をしてみて大変だったことについても伺った。一番大変だったことは、集客などをすべて自分一人でやらなければいけないこと。「平日のお仕事は業務内容が定まっておりますが、エステ事業はすべてを自分で考えなければいけません。地域の情報誌に広告を出したり、ホームページを作ってSNSで発信したり……すべて手探りな点はやはり大変です。」
また、自分から学びに行く姿勢も重要だ。「エステや講師業は、最新の情報を仕入れていないと事業が廃れてしまいます。世の中に目を向け、アンテナを張ることも心がけています。」
ご自分の休みの時間を使い、短い時間で集中して情報収集を心がけ、集客のための勉強会にも積極的に顔を出していらっしゃるそう。

いま、この瞬間に全力を注ぐ

谷さんとお話ししていて、一番印象的だったのが「いま、この瞬間に全力を注ぐ」という言葉だった。プライベートにしても仕事にしても、なかなか「いまこの瞬間」にだけ集中できることは少ない。特に、家族だ。当たり前にそばにいる存在だからこそ、甘えて他のことに気を取られていないだろうか。

今年の6月に、谷さんの旦那さんが入院した。毎日お見舞いに顔を出したところ、看護師さんに「こんなに来てくださる奥さんは珍しいですよ」と言われたそう。旦那さんの入院にしても、息子さんの部活の応援にしても、「いまできることを精一杯やること」を谷さんは心がけている。「言い訳をしようと思えば、いくらでもできてしまうんです。子供が小さいから、仕事が忙しいから…でも、いつか振り返った時に、後悔しないように。子供、主人、田舎の両親のことも。一生懸命、できる限りやろうと思っています。」

小学校三年生から継続している剣道も、子育てなどのお休み期間を経て、息子さんが小学校の時に再開。現在は世田谷区の大義塾に所属し、教士七段を取得。指導者として活躍していらっしゃる。

「今年、高校の同級生と50歳記念の旅行にいきます。青春時代に寝食を共にしてきた友人たちと、こうして歳を重ねてからも会えるのはとても嬉しいです。剣道やってて良かったなって思います。学生時代は、勝ち負けが常についてきましたが、今は所属する大義塾で尊敬する先生方に、人間形成についても学ばせていただいています。心の拠り所の一つです。」

剣道を再開するきっかけをくれた息子さんにも、旦那さんにも、心から感謝しているそう。母、事業主、剣士…三足のわらじを履く谷さん。一見するとバラバラのことをしているように見えるが、その根底には「周りの人と明るく、心地よい居場所を作りたい」という共通した価値観があるように感じる。

ライター:佐藤まり子
本記事は1designからの転載記事です。

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