【剣道日本掲載 寄稿記事】武士道の精神を広めたい―剣道ECサイトを立ち上げた二人の起業家

2017年8月25日 • 起業秘話 • Views: 9178

剣道を仕事にすることができたら―剣道に長く携わる方であれば、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。その想いを実現し、サービスを立ち上げた二人の若き起業家にインタビューをしました。(2017年8月/剣道日本10月号掲載)

“剣道の町”で育った二人

―まず、剣道を始めたきっかけについて教えていただけますか?
上島:僕が剣道を始めたのは、小学校1年生頃です。出身は宮城県(仙台市茂庭台)で、いわゆる”剣道の町”で育ちました。剣道をすることが当たり前の環境だったと思います。兄も剣道をしていましたし、遊び友達も剣道を習っていたので、自然と僕も剣道を始めました。先生は特練の師範で、とても恵まれた環境だったと思います。


小学校5年生の時に宮城県警察少年柔道・剣道に出場したときの写真

 

工藤:私も6歳から剣道を始めました。剣道歴は26年です。上島と同様に、北海道の”剣道の町”(乙部町)出身です。人口は約4000人、そのうち40人が剣道を習ってるような町でした。

地元乙部町は人口4000人の町

工藤:中高と剣道に打ち込み、大学は立教大学出身なのですが、明治大学の剣道同好会に所属していました。
私はいわゆる「リバ剣」で、社会人になってからスノボ、サーフィン、マラソン…別の趣味に没頭していた時期があります。大学を卒業した時は一生剣道はやらないだろうなと思っていました。

 

―再開したきっかけは何だったのでしょうか?
工藤:勤め先だったヤフー株式会社で、2015年に剣道同好会が発足したんです。
それがきっかけで8年ぶりに剣道を再開しました。技術向上だけではなく、剣道や武道の精神性を改めて見つめ直しのめり込んでいき、次第に自分を育ててくれた剣道を軸としたビジネスで社会に貢献したいと強く思うようになりました。


ヤフー剣道同好会のみなさん。月に2回ほどの頻度で稽古しているそう

 

剣道を仕事に―起業を考えた時期

―お二人ともいつ頃から起業を考えていらっしゃったのですか?
上島:大学生の頃からですね。僕は高校までは剣道だけの生活だったんです。一途に剣道だけやってて、将来のことを考えたことがありませんでした。剣道を続けていれば社会人の道も拓けてくるし幸せに暮らしていけるんだろうなぁって思ってました。

―好きなことが仕事になるって素敵ですね。
上島:はい。しかし、剣道を仕事にする場合、実際の選択肢は警察官か教職員。素晴らしい職業だとは思いますが、僕は公務員気質ではないようです。これまでも、ずっとベンチャー企業に在籍してきました。

大好きな剣道を仕事にできないと思ったときのショックは大きかったです。

―上島さんは、ご実家が自営業や会社経営をなさっていたのでしょうか?
上島:いえ、父は会社員です。ただ、「やりたいことはやれ。自分の可能性を信じろ」という家族の教えがあります。自由に育てられました。

工藤:私も、もともとぼんやりと事業を起こしたいと思っていました。でも、何をしたいかがあまり明確でなくて。上島とは対象的に、私はどちらかというと安定志向です。父が地方公務員だったことも大きいかもしれません。
仕事は好きだけど、このまま働いていて自分が本当にやりたいことが見つかるのだろうか?と悶々としていました。

―ちなみにお二人は元々お知り合いだったのでしょうか?
工藤:実は、私がヤフー株式会社、上島が株式会社イノーバに勤めている時に一緒に仕事をしたことがあるんです。その時は、お互い剣道をしていたことは知らなくて。渋谷の金王道場に入門して、稽古で顔を合わせて「あ!」って(笑)


2017年の東京都大会では同じチームで出場

―すごい偶然ですね!
工藤:はい。それから稽古の帰りに一緒に飲む機会も増え、剣道や起業の話をするようになりました。上島との出会いは私にとってはとても大きいです。剣道を主軸にしたビジネスをしたいという人に出会ったことがなかったので…。
自分を育ててくれた剣道の分野でビジネスをやることは、本当にやりたいことなんじゃないか?このジャンルで成功させたい、と思うようになりました。

 

ただ商品を売るだけではなく、背景にある物語も伝えたい

―お二人が立ち上げたBUSHIZO(ブシゾー)とはどんな事業ですか?
上島:一言でいうと、剣道用品のセレクトショップです。BUSHIZO(ブシゾー)というサービスネームは、「武士道」と新渡戸稲造の「造」を組み合わせて作りました。

剣道用品をオンラインで購入する際、情報が少なすぎて商品を選ぶことができなかった方が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。僕自身がそうでした。

このため、BUSHIZO(ブシゾー)でには複数の剣道具メーカー様の商品をお取扱いさせていただきだき、サイトを見た方が商品を比較、検討できるようにしています。また、商品紹介だけではなく、メーカー様自身の情報や商品が生まれた背景も丁寧に伝えていくつもりです。


複数メーカーの剣道用品を比較・検討できるBUSHIZO(https://bushizo.com/)


各メーカーの想いを伝えるインタビューも

工藤:メーカー・商品情報の発信を通して、お客様の検討が容易になるようなECサイトを目指したいですね。
また、今後は海外への情報発信も視野にいれています。日本人としてやり甲斐がある取り組みにしていきたいです。

BUSHIZO(ブシゾー)を通して実現したいこと

―具体的にBUSHIZO(ブシゾー)を通してどんなことを実現したいと思っていますか?

上島日本人が本来もっている武士道の精神を再度伝えて、人々の仕事や生活にいい影響を与えたいと思っています。
武士道の精神には、さまざまな解釈がありますが、僕たちは「自分や今このときを大切にし、謙虚に成長するこころを持って真剣に生きること」を武士道の精神と考えています。この精神は剣道をやっている方ならば、自然と体現できているのではないでしょうか。

―禅の考え方に近いところもありそうですね。
上島:”Living in a moment(いまこの時を生きる).”という言葉があります。
剣道をしているときは剣道に集中していて他のことは考えませんよね。ご飯を食べるときにはご飯に集中し、仕事の時は仕事に集中する。禅の考えでは、「幸せは自分の中にある」と説いていますが、現代人はもっと自分自身と向き合う時間に投資をすべきだと思います。

―起業してみていかがでしょう?「幸せ」に関する感じ方に変化はありましたか?
工藤:とても幸せです。雇われて組織に所属していると、やりたくないことも組織をまわすためにやらないといけませんが、いまはやりたいこと100%ですから。また、同じミッションをかかげ、同じ船に乗っている感覚があります。同じモチベーションを持っている人との仕事は楽しいです。

工藤:また、先ほどの「自分と向き合う」という話に関しては、何事も「自分」を起点に考えて、戒めることも大切だと思います。
剣道で相手に一本入れられてしまった時に、「あなたが攻めてきたせいで、手元を上げてしまった!」といったことはないですよね。自分が弱いから、自分の攻めが未熟だったから、と考えるはずです。こうしたほうがよかった、こうしないほうがよかったという反省ができます。日常生活だと、過ちを人のせいにしてしまうこともありますが、剣道を思い出して自分を戒めることができると思います。

剣道が実生活や仕事で役立っていること

―お二人は25年以上剣道を継続していて、さらに仕事にもしていますが、剣道で培ったご経験は、実生活や仕事でどんな風に活きていますか?
上島:驕りがなくなると思います。仕事でいい成績をだしたり、出世したりすると得意になるのが人情というものです。そんなときに剣道をすることで、謙虚でいられ、敬意を持って人と接することが自然にできると感じます。

他の人と比較することには意味がなく、仕事でも自分と相対しているという感覚をもってできています。

工藤:簡単な表現ですが、厳しい稽古を通じて諦めない心が養われたと思います。
努力は実を結ぶという実体験は自分にとってインパクトの大きい出来事で、その経験は仕事に対する姿勢に繋がっていると思います。達成まで努力をし続けることが重要なのに、どうしてもメンタル面で厳しくなってしまう場面があります。そういったときに踏ん張って前に進めるのは剣道のお蔭だと感じます。

 

今後の展望

―BUSHIZO(ブシゾー)の今後の展望や、これからの選手としての目標などお聞かせいただけますか?

上島:まずは、サイトの利便性をより高めていきたいです。直近では、何を購入したらいいかわからないというお客様に向けたコンシェルジュサービスをリリースしました。ひとりひとりに合った商品の提案を行っていきます。

また、剣道以外の武道具製品もいずれ扱いたいと思っています。わたしたちはインターネットマーケティングに知見があるので、その知見を活かして武道・芸道業界の会社をサポートしていきたいですね。ヨーロッパで在庫を持つなど海外展開も視野にいれています。剣道を広める人材を派遣するなど…。そうなってくると雇用を生み出すことができます。剣道だけで生きていきたい、そういう人たちの選択肢にBUSHIZO(ブシゾー)が入ったら嬉しいです。

工藤:剣道は一生稽古をし続けることが第一目標です。私は父が剣道の師匠で、父から剣道の楽しさや厳しさを学び、育ててもらいました。剣道の道をずっと歩んでいきながら恩返しをしていきたいと思っています。

事業については、剣道防具・用品の物販事業という括りの中で留まることは考えていません。剣道をはじめとした武道の歴史や文化への尊敬を持って理解を深めながら、それらを国内・海外へマーケティングすることがミッションだと考えています。また、会社としては1つのサービスをしっかり成長させることは勿論、様々なアプローチでサービスをいくつも展開していきたいです。

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こちらは「月刊剣道日本2017年10月号」に掲載されたものをアレンジしたインタビュー記事です。
2017年10月号で剣道日本は創刊「500号」を迎えます。
記念特集は「剣の道、剣の心」、全日本学生選手権大会の付録DVDも。

 

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