プロフィール
LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン株式会社 CHAUMET ゼネラルマネージャー 蒲谷 直子氏蒲谷さんのご経歴
ー現在はファッション業界に身を置いていらっしゃいますが、最初のキャリアから教えてください。 蒲谷「新卒で入社したのは、CSファースト・ボストンという金融会社です。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーというコンサルティング会社に転職しました。マッキンゼーには3年間程在籍したのですが、楽しいと感じることができたのは、合計で20分くらいです(笑)。それぐらい、プレッシャーのきつい環境でした」 ー聞きしに勝る環境ですね。 蒲谷「2社ともとても勉強にはなりましたが、自分が好きなことに携わりたいという想いが強く、ファッション業界に移りました。社会人としてのスタートがそんな感じだったので、ワークライフバランスという考え方はしっくり来ておりません(笑)」ラグジュアリーブランド、CHAUMET(ショーメ)
—いまはどういったお仕事をされているのでしょうか? 蒲谷「いまは、CHAUMET(ショーメ)というフランスのジュエリー会社でGeneral Managerをしています。1780年に創業したCHAUMETは、最初の顧客がナポレオンという由緒あるブランドなんです」 ー今のお仕事のやりがいは、どういったことでしょうか。 蒲谷「たまにフランスの工房を訪問しにいくのですが、ものづくりに携わっている仕事をしていると、まさに『実業』という感じを受けていてそれにやりがいを感じます」
剣道との出会い
道場前にて
—蒲谷さんは成人されてから剣道を始められたのですよね? 蒲谷「弟は剣道をやっていましたし、私も幼いときから剣道をやりたかったんです。でも、母に肩幅が広くなるから、ダメといわれていて(笑)。大人になってからもずっとやりたいという気持ちはあったので、自分の子どもが剣道を始めるタイミングで私も始めました。 すると、自分でも信じられないくらい剣道にはまってしまって。当時は時間に融通がきいたので、週5日くらいは稽古をしていました。剣道にのめり込みすぎて、剣道関連の仕事への転職を一時期検討したほどです」 —剣道は、教育上どのような影響があると感じますか? 蒲谷「礼儀正しい人間に育ってくれているな、と思いますね。今どき他人の子どもを、愛情をもって叱ってくれる場所なんてありません。自分のこどもが、先生方に指導していただいているときは有難いと感じます」 —剣道を始めたばかりのとき、どんなところが楽しかったのですか? 蒲谷「相手と相対したとき、『体をうまく使うにはどうすればよいか』と考えるのは楽しいです。足の開き幅や構え方を変えると、まったく違う剣道になりますよね。そういったことをひとつひとつ、確認しながら剣道をやることが楽しいんです」 —逆に苦労されたのはどういったところでしたか? 蒲谷「大人から剣道を始めると、技術の成長スピードが子どもに比べて遅いですよね。だから、体系立てて効率よくカリキュラムで教えてほしいと思っていました。しかし、武道は『体得しながら』学んでいくものだと気付いたんです。 論理的に学ぶことではない、東洋的なアプローチだと考えています。部分部分でマスターしていくわけではなく、『全体』で学んでいくということ。それって、論理的な世界で生きてきた私にとってはすごく新鮮だったんです」 ー最近はシリコンバレーのビジネスパーソンが、ジョブズやGoogleの影響から東洋的な禅を学んだりしていますよね。 蒲谷「論理だけでは物事が進まないということに、彼らも気付いてきたのではないでしょうか。マッキンゼーにいたときも、ロジカル(論理的)にプロジェクトは進めるのですが、論理だけでは埋められない溝のようなものがあって。その溝は、東洋的なアプローチで埋めるとうまくいくのかもしれませんね」今後の目標
蒲谷「恥ずかしながら、剣道において『相手の気持ちを読む』というアプローチがあることを最近知りました。『相手の気持ちを読む』ということを知ってから、なるべく意識するようにしていますが、一朝一夕でできることではない。今後は、相手を動かしたり、理合のある打ち方をしていきたいと思っています」 —剣道をやってみて、仕事に活きていることがあれば教えてください。 蒲谷「『間の取り方』は、対人関係においても重要です。仕事の交渉時に活きていると感じますね。『いまは膠着状態』とか『相手が深く入ってきた』などを意識します」 —今後の目標を教えてください。 蒲谷「72歳で八段取得と公言してます。生涯剣道でしょ、ということで(笑)」 —ロジカルな世界で生きてこられた蒲谷さんならではのコメントが印象的でした。本日は、ありがとうございました。 インタビュアー ◎代表取締役 上島 郷
