大石 紗己
高校入学と同時に部活動で剣道を始める。大学でも剣道部に入部。大学を1年間休学してカナダにワーホリで滞在、剣道を通して外国人との交流を経験。大学卒業後、日本語教師としてタイの学校で勤務しながら、剣道も続けアジア圏でたくさんの師と剣友に出会う。
その後、JICA協力隊で2014年1月から西アフリカにあるセネガル共和国で日本語教師としてボランティア活動に従事。その年の11月にダカール剣道クラブを作り、現在も継続している。協力隊終了後は、現地のNGOで勤務し教育支援に携わっている。
剣道をはじめたきっかけ
ー剣道をはじめたきっかけを教えてください。
大石「高校入学時に始めました。なので、まだ三段なんですよ。指導者としては、
はやく四段を取得したいと思っています。
兄がずっと剣道をやっていたので、私も中学校から始めたいと思っていました。
中学入学時は仲のいい友達が別の部に入部したので、私も流されて友達と同じ
部活に入ってしまいました(笑)。
高校入学時、『やっと剣道を始められた』という気持ちでしたね」
ー剣道の魅力はどういった部分にあると思われますか?
大石「私は交剣知愛という言葉が好きなんです。大学生の時にカナダにワーホリで滞在したのですが、剣道をしたことで友達がたくさんできて人脈が広がりました。
そのときから剣道がより一層好きになりましたね」
現在のお仕事
ー現在のお仕事を教えていただけますか。
大石「あしなが育英会という団体をご存じでしょうか?
あしなが育英会から派生したセネガル事務所で現地採用いただき、そこで勤務しています。
今回は本社出張で日本に帰国しました」
ー具体的には、どのようなお仕事をされるのでしょうか?
大石「セネガルから高校や大学への留学をサポートしています。
高校生の留学先は仙台育英学園だけですね。今年から日本の大学への留学サポートも始まりました。私は出発する生徒や学生に日本語を教えています。
フランス語圏である、フランス・ベルギー・カナダには多くの学生を送り出して
います。お金を出して終わりということではなく、将来自分の国でリーダーとして活躍できる人材を創出するのが目的で、熱意を持って取り組んでいます」
セネガルで剣道を普及しようとしているワケ
ーなぜセネガルで剣道を普及させたいと思われたのでしょうか?
大石「私が好きだからですね。セネガルに行く前に、タイにいました。現地採用で学校に雇用してもらい、日本語教師をしていました」
ータイにいらっしゃったんですか?
大石「はい。その時は、バンコクなどで剣道していましたよ」
ー国際経験が豊かですね。
大石「タイにいたときに、筑波大学の鍋山先生と知り合うことができました。
タイから帰国して、セネガル行きが決まったタイミングで鍋山先生と日本で
お会いする機会があったんです。セネガルに道場がないことを話したら、
『君が立ち上げるなら協力するよ』と言っていただいたんです」
ー鍋山先生のサポートがあったのですね。
大石「鍋山先生は使わなくなった防具を集めて、セネガルに送ってくださったんです。
本当に感謝しています」
ーたった一人で始めるというのは、心細いはずですよね。
大石「鍋山先生だけでなく、現地にいる日本人で剣道経験者の方に稽古に来てもらったり、コートジボワールで剣道を普及された先生にもお話を聞かせていただいたりしました。皆さまのサポートがあって続けられています」
剣道普及における課題
ー剣道普及における課題はありますか?
大石「課題はたくさんあります。始めてもやめてしまう方が多いのは特に課題です。
2014年11月から始めて現在は5~6人くらいのセネガル人が剣道をしています」
ーその5~6人は、剣道のどういう面に興味を持たれたのでしょうか?
大石「武道の精神に興味を持たれている方がいます。日本が好きな人が
多いですね」
ー北米・ヨーロッパの方々は武道の精神に興味を持たれていることが多い印象ですが、セネガルにも興味のある方はいらっしゃるのですね。
大石「一人は、元々柔道をやっていました。柔道はやめてしまったのですが、
剣道は続けてくれていますね。いつかその方が現地のリーダーとして活躍して
くれると嬉しいです」
ー剣道以外の武道の普及状況はいかがでしょうか?
大石「空手、合気道、武術もあります。正確にはわかりませんが、柔道人口は多いですよ。フランスは柔道が強いですよね。
セネガルはフランスの植民地だったので、フランスから支援を受けることができたり、指導者がセネガルに来られたりすることが他の国に比べて多いようです」
ーフランスでの剣道がポピュラーになればなるほど、セネガルにも影響があるのでしょうか。
大石「その可能性はあると思います」
ーほかにも課題はありますか?
大石「鍋山先生から『お金を集めることが大事だよ』とアドバイスいただいています。お金があれば、広告もできますし、防具を揃えることもできます。そういったお金を集める動きも私の仕事だと思っています。
ビジネスパーソンではないので、そういった部分が苦手なのですが、今後は向き合っていく必要性を感じています」
全日本剣道連盟からの寄贈
ー普及において、前進したことはなにかありましたか?
大石「剣道具一式(剣道具20セット,竹刀20刀,剣道着上下10着及び手ぬぐい10巾)を全日本剣道連盟から寄贈いただいたことですね。セネガルのメディアで大きく報じていただき、剣道の知名度があがりました」
※出所:在セネガル日本国大使館
ーそれはすごいことですね!
大石「はい、とても嬉しかったです!」
ー全日本剣道連盟から寄贈は、どのようなかたちで決まったのでしょうか?
大石「何度かこちらから依頼させていただきました。吟味いただき、最終的に寄贈を決めていただきました」
ーセネガルで新規勧誘する際は、どのようにされているのでしょうか?
大石「呼ばれれば、『どこにでもデモンストレーションにいく』
ということはやっています。JICA(国際協力機構)関係や日本祭りのようなイベント、またダカール市内での武道関係のイベント呼ばれれば行くようにしています。あとは、ポスターを貼っていますね」
ー現在は柔道連盟に所属した剣道クラブという団体なのですよね。
大石「剣道はまだ規模が小さいので、連盟としては機能していないです。柔道連盟の会長がご理解ある方で、協力を得ながら剣道の普及に努めています。
柔道のイベントに便乗して剣道のPRを行うこともあります」
必要なのは、ナレッジの共有
大石「Facebook経由で、たまに連絡がきます。この前はチュニジア人の方でした。
2013年から剣道の普及にあたり、現在では60人程度会員がいるそうです。
セネガルと1年くらいしか変わらないのに、どうやってそんなに会員を集めたのか
と思いましたね」
ーまだ4年くらいですよね。
大石「日本人の先生がいらっしゃったみたいです。普及のさせ方という教科書
がないので、成功事例の共有が必要と感じます」
ー海外普及のためのコミュニティーはないのでしょうか。
大石「ないかもしれませんね。なので、手探りでやっている状況です。剣道の教え方、
剣道の広め方という両面で知見を蓄積していきたいと考えています」
ー素晴らしいマインドで剣道普及にあたられている大石さん。誠実で非常にパワフルな方でした。
本日はありがとうございました。
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