よくある剣道昇段審査設問の解答例(二段・三段編)

剣道審査二、三段筆記問題1

2020年9月22日 • お役立ち記事 • Views: 124632

新型コロナウイルス感染防止対策として、全国的に剣道昇段審査の開催が見送られていましたが、ようやく少しずつ再開の兆しが見えてきました。

そこで、今回は、前回の『よくある昇段審査設問の解答例(初段編)』に引き続き、よくある剣道昇段審査設問の解答例(二・三段編)をお届けします。

初段よりも、剣道についてより深い理解が必要な問題が出題されますので、十分に準備していきましょう。

都道府県ごとに出題される問題は異なりますので、先に初段編として掲載している問題が二・三段で出題される場合、または、その逆もありますので、その点はご了承願います。

昇段審査設問の問題解答例

問 題 例

「剣道の理念」について書きなさい。

剣道の稽古に入る前の注意事項について述べなさい。

剣道で養われる身体面・精神面について書きなさい。

「竹刀を点検するときの要点」を書きなさい。

切り返しの必要性について述べなさい。

正しい鍔ぜり合いと注意点を説明しなさい。

「一本打ちの技」について説明し、主な技を書きなさい。

「二・三段の技」について説明し、主な技を書きなさい。

「出ばな技」について説明し、主な技を書きなさい。

「払い技」について説明し、主な技を書きなさい。

「引き技」について説明し、主な技を書きなさい。

打突で三つのゆるさぬところを書きなさい。

剣道における残心について書きなさい。

剣道の三殺法について説明しなさい。

剣道における目付けについて説明しなさい。

「打突の好機」について説明しなさい。

「打ち切る」について説明しなさい。

「基本打突や技の練習で注意すること」を書きなさい。

打ち込み稽古と掛り稽古の違いを述べなさい。

打ち込み稽古で、元立ちが気をつけることを述べなさい。

掛り稽古で、元立ちが気をつけることを述べなさい。

剣道における見取り稽古について述べなさい。

日本剣道形で使われている「五つの構え」について述べなさい。

日本剣道形を実施するときの「足さばき」で気をつけることを書きなさい。

「試合の目的・効果」について述べなさい。

「有効打突の条件」について説明しなさい。

 

解 答 例

「剣道の理念」について書きなさい。

剣道は、剣の理法の修練による人間形成の道である。

 

剣道の稽古に入る前の注意事項について述べなさい。

自分自身の身体の問題については、自身の体調をよく知っておくこと、手足の爪をしっかり短く切っておくこと、準備運動を怠らず、身体を十分に温めて万全の状態にしておくことが大切です。竹刀については、先革の破れがないか、中結い(中じめ)のゆるみや切れがないか、竹にささくれや割れがないかなど、また、剣道具については、面紐などの紐や、胴乳革などの革が切れていないかなどの、手入れを十分に行っておくことが必要です。袴や剣道着などについては、破れたりしてはいないかなど、日頃より着装をしっかりするように気をつけます。

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剣道で養われる身体面・精神面について書きなさい。

(1)身体面

剣道は全身を用いる運動のため、新陳代謝が活発になり、常に活気ある身体を持続させて、自然に全身を円満に発達させることが出来るものです。特に、全身の筋力を向上させると同時に、正しい姿勢を維持させることによって、背骨や腰部の発達をよくし、心肺を強健に、血液の循環を促進させます。また、動作を俊敏に、意志を果断にし、頭脳などの働きを盛んにすることができます。

(2)精神面

剣道は対人競技ですが、人を叩くことが目的ではなく、人を活かし自らを律するものでなければなりません。そのような精神のもと、厳格な修業を積み重ねることによって、礼儀正しさや、剛毅・果断・忍耐力・持久力などの精神力を養います。

 

「竹刀を点検するときの要点」を書きなさい。

(1)先革が破れていないか。

(2)中結が切れたり、切れそうになっていたりしていないか、緩んではいないか、また、位置が剣先から竹刀の全長の約1/4のところに固定されているか。

(3)弦が緩んでいないか。

(4)竹片にささくれや割れなどがないか、カーボン竹刀の場合、黒いカーボン繊維が露出していないか。

 

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切り返しの必要性について述べなさい。

切り返しは、正面打ちと連続左右面打ちを組み合わせて、手の内、間合、足さばき、気合などの基本を総合的に練習するためのものです。切り返しには、正しい姿勢や構え、打ちの刃筋や手の内の作用、足さばきのしかたや間合のとり方、呼吸法などを身につける、さらに、強靱な体力や旺盛な気力を養う、気剣体一致の打突を習得するなどの目的があります。そのようなわけで、剣道の上達のために、切り返しは必要なものなので、試合稽古が出来るようになっても、稽古の始まりと終わりには、必ず切り返しを行うようにします。これは、準備運動、整理運動としての側面も持っています。

 

正しい鍔ぜり合いと注意点を説明しなさい。

鍔ぜり合いとは、相手を攻撃した時または相手から攻撃をされた時に、間合が接近して、互いの鍔と鍔が競り合った状態になることを言います。自分の竹刀を少し右斜めにして手元を下げ、下腹に力を入れて自分の体の中心を確実に保つようにします。お互いの鍔と鍔が競り合う中で、手元を変化させたり、相手の体勢を崩したりして、打突の機会を作り出します。

注意点は、次の通りです。

(1)手元をさげて、下腹に力を入れ、腰を十分に伸ばす。

(2)首を真っ直ぐに保ち、相手と背比べをする気持ちで相対し、身体が前傾しないようにする。

(3)お互いの鍔と鍔が競り合うようにする。

(4)相手の肩に自分の竹刀をかけたり、刃部を身体にかけたりしない。

(5)必要以上に力んだり、逆に気を抜いて休んだりしない。

(6)いつまでも鍔ぜり合いの状態のままいるのでなく、積極的に技を出したり、互いに分かれるようにする。

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「一本打ちの技」について説明し、主な技を書きなさい。

一本打ちの技とは、自分の攻めに対して、相手の剣先や手元が変化し、隙ができたところを、すかさず打突する技のことです。

主な技は、次の通り。

(1)相手の剣先がさがる  ・・・・・・ 面・突き

(2)相手の剣先があがる  ・・・・・・ 小手

(3)相手の手もとがあがる ・・・・・・ 胴

(4)相手の剣先が左に開く ・・・・・・ 面・突き

(5)相手の剣先が右に開く ・・・・・・ 小手・面・突き

 

「二・三段の技」について説明し、主な技を書きなさい。

二・三段の技とは、最初の部位を打突したことによって相手が変化して隙ができたときに、隙のある部位をすかさず続けて打突する技のことを言います。また、間合が遠く、一本打ちの技を仕掛けることが出来ない場合や、相手の構えに隙がなくて打突が出来ないときに、最初の打突で打ち間を作りながら構えを崩し、すかさず隙のできた部位を打突する技も、二・三段の技の一つです。三段技は、二段技のあと、さらに隙ができた部位を続けて打倒する技のことです。なお、体当たりを行い、引きながら打つ場合もあります。

二段の技には、小手→面、小手→胴、面→面、面→体当たり引き面(または小手、胴)、面→胴、突き→胴があり、さらに、三段の技は、小手→面→胴、小手→面→面、小手→小手→面、小手→突き→面、面→面→胴、突き→面→胴、突き→面→面、小手→面→体当たり引き胴があります。

 

「出ばな技」について説明し、主な技を書きなさい。

出ばな技とは、相手が攻め込もうとする時や、打突しようとする時の動作の起こりばなをとらえて、打突する技のことです。主な技に、出ばな面、出ばな小手、出ばな突きがあります。

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「払い技」について説明し、主な技を書きなさい。

払い技とは、相手の構えに隙がなくて打突が出来ないときに、相手の竹刀を右または左に払い上げたり払い落としたりすることで、相手の構えを崩して打突する技のことです。主な技は、払い面、払い小手、払い胴、払い突きです。

 

「引き技」について説明し、主な技を書きなさい。

引き技とは、体当たりや鍔ぜり合いから、相手の体勢を崩して、手元の変化を瞬時に捉え、引きながら打つ技のことです。主な技は、体当たり→引き面、体当たり→引き胴、体当たり→引き小手、鍔ぜり合い→引き面、鍔ぜり合い→引き胴、鍔ぜり合い→引き小手です。

 

打突で三つのゆるさぬところを書きなさい。

(1)起こり頭(出ばな)

相手が技を起こし始めたところ。技を出そうとするときには、必ず構えに変化が起こり、隙が生まれます。そこをすかさずこちらから打突します。これを出ばな技といいます。

(2)受け止めたところ

相手がこちらの技を受け止めた時は、技を出し切った時と同じく、必ず隙があるものです。その時に、相手が次の攻撃に出ないうちにすかさず打突します。

(3)技のつきたところ

相手が連続して打突してきたり、互いに攻め合って技を出し合ったりして、技が尽きたところや、相手が打突を失敗したところ。この瞬間は、どれも完全な隙となりますので、すかさず打突をします。

 

剣道における残心について書きなさい。

残心とは、打突した後でも油断せず、相手の反撃にいつでも対応できるような身構えと気構えのことです。

(1)打突後には、相手と間合をとって、相手からの反撃に備える。

(2)打突後に適正な間合が取れないような場合、自分の剣先を相手の中心につけるようにすることで、相手からの反撃に備える。

(3)残心のないものは、有効打突と認められない。

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剣道の三殺法について説明しなさい。

剣道の三殺法とは、相手を制するための手段として、相手の竹刀を殺し、技を殺し、気を殺すことをいい、相手の気力を積極的に挫き、こちらの打突の機会を作り出します。

竹刀を殺すとは、相手の竹刀を押さえたり、払ったり、巻いたりして、相手の剣先を自分の中心から外し、相手に打突の機会を失わせることです。

技を殺すとは、たえず先手先手と攻め、相手に技を仕掛ける余裕を与えないようにすることです。

気を殺すとは、気力を全身にみなぎらせて相手を圧倒し、常に先の気持ちを持ち、相手が攻撃しようとする機先を制し、相手の気力を挫くことです。

 

剣道における目付けについて説明しなさい。

剣道における目付けとは、自分の目の付けどころのことをいい、基本的には相手の目を見ながら、身体全体にも注意を払います。「遠山の目付け」や「紅葉の目付け」、「観見二つの目付け」などの教えがあります。「遠山の目付け」とは、遠い山を見るように、相手の目を中心に相手の全体を見ることで、「紅葉の目付け」も同様に、葉っぱ一枚を見るのではなく、木全体、さらに山全体を見ることで紅葉の美しさが分かるという意味です。また、「観見二つの目付け」とは、宮本武蔵が五輪書の中で、相手の本質を見る目を「観の目」、ただ現象を見る目を「見の目」と言っているもので、「観の目強く、見の目弱く」すなわち、ただ漠然と相手を見るのではなく、相手の心の動きまでも見抜くことが重要であるという教えです。

 

「打突の好機」について説明しなさい。

打突の好機とは、相手との攻防を行う中で、相手の構えや体勢の崩れや変化をとらえて打突することによって、有効打突に結びつけることができる機会のことです。

主なものは次の通りです。

(1)相手の動作の起こり頭(出ばな)

(2)相手の技が尽きたところ(動作や技が終わったところ)

(3)相手が居ついたところ(緊張が緩んでしまった瞬間や気持ちで圧倒されて動けなくなったところ)

(4)引きはな(後ろに退くところ)

(5)こちらの技を受け止めたところ(受け止めた場所以外のところに隙が生じる)

(6)息を深く吸うところ(息を吸う時、動作は止まる)

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「打ち切る」について説明しなさい。

打ち切るとは、相手の行動をよく観察し、判断して、相手の隙を発見するや否や直ちに打突を行い、勝ち負けなどの意識を捨てて全力で打つことをいいます。

 

「基本打突や技の練習で注意すること」を書きなさい。

(1)正しい姿勢で、気力を充実させ、互いの攻め合いから打突する。

(2)適切な間合から、打突の機会を的確にとらえ、大技で打突する。

(3)一打突ごとに充実した気勢を持って、確実に気剣体一致の有効打突となるようにする。

(4)手先や腕だけで打突するのではなく、充実した気勢と体を伴って、腰から打突する。

(5)打突後は、身構え、気構えなどの残心をとり、次の打突に備えるようにする。

 

打ち込み稽古と掛り稽古の違いを述べなさい。

打ち込み稽古とは、打ち込む側が元立ちの与える打突部位を捉えて打ち込んでいくなかで、基本的な打突の技術を体得する稽古法で、掛り稽古は、掛かる側が積極的に元立ちを攻め崩して打突の機会を作り出し、短時間のうちに気力や体力を尽くして打ち込んでいく稽古法です。

 

打ち込み稽古で、元立ちが気をつけることを述べなさい。

(1)気を抜かずに、常に合気となって相手に対応する。

(2)適切な間合から打ち込ませる。

(3)打突の機会を的確に与え、正しい打突を引き立てる。

(4)打突動作が単調な繰り返しにならないようにし、一本打ちや連続技、体当たり、引き技などを織り混ぜることで、変化のある対応になるよう工夫する。

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掛り稽古で、元立ちが気をつけることを述べなさい。

(1)常に合気となり、掛かる者の気力が萎えたような時は発憤させるようにする。

(2)間合や打突の機会に注意する。

(3)常に打突の機会に素早く備えるようにする。

(4)掛かる者が居ついたり、気剣体一致の打突が見られなくなるような時は、間合に配慮したり、いなしたり、応じたり、出ばなを打ったりするなどの工夫をする。

(5)打突動作が単調な繰り返しにならないようにし、連続技や体当たりからの技なども織り交ぜながら、変化のある対応になるよう工夫する。

(6)冷静な態度で対応し、無謀な行為は決してしないようにする。

 

剣道における見取り稽古について述べなさい。

見取り稽古とは、剣道を見学することですが、剣道では、見学はただ見るだけではなく、剣道修業の一つとして重んじられています。見取り稽古を行う際には、着装や姿勢、竹刀の握り方や構え、足の使い方、攻め方、技の出し方、気迫や風格など、あらゆる角度から観察して、互いの技の出し合いを捉え、自分の日頃の剣道と比較して、勉強・反省の材料とします。

 

日本剣道形で使われている「五つの構え」について述べなさい。

日本剣道形の太刀の構えには、次の五つがあります。

(1)中段の構え ・・・ 「人の構え」や「常の構え」とも言われ、すべての構えの基礎となる構えで、攻防に最も適した構えです。

(2)上段の構え ・・・ 「天の構え」や「火の構え」とも言われ、太刀を頭上に振りかぶり、相手の気を上から圧して捨て身で攻撃する性格を持ち、炎のように激しい攻撃的な構えです。諸手左上段と諸手右上段があります。

(3)下段の構え ・・・ 「地の構え」や「守の構え」とも言われ、剣先を下げて相手の足下を攻め、自分の身を守りながら、相手の変化に応じて攻撃に転ずる構えです。

(4)八相の構え ・・・ 「陰の構え」とも言われ、諸手左上段から転じたとも考えられています。太刀を大きく右肩にとり、相手の動作を監視しながら、相手の出方によって攻撃に転じる構えです。

(5)脇構え   ・・・ 「陽の構え」とも言われ、自分の刀身の長さを相手に知らせないように、半身になりながら太刀を右脇にとり、相手の動作を監視しながら、相手の出方に応じて臨機応変に攻撃に転じる構えです。

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日本剣道形を実施するときの「足さばき」で気をつけることを書きなさい。

足さばきとは、相手を打突したり、相手の攻撃をかわしたりするときに用いられる足の運び方です。日本剣道形では、歩み足、送り足、開き足が使われ、注意点は次の通りです。

(1)足さばきは、すべて「すり足」で行い、「踏み込み足」は用いない。重心は上下させないよう、滑らかに行うことが大切である。

(2)足の運び方は、原則として、前進するときは前の足から、後退するときは後ろの足から動作を起こす。

(3)足のさばき方は、原則として、一方の足に他方の足が伴うようにする。特に、打突時の後ろ足は残さずに、前の足に伴って引きつけることを忘れないようにする。

 

「試合の目的・効果」について述べなさい。

試合とは、日頃の稽古で修得した技術や気力、体力や態度などを十分に発揮し、勝敗の競い合いを通じて、日頃の稽古内容を検証し、自分自身の今後の剣道の方向性などを探究するためのものです。試合の最中は、誰の援助も受けることなく、自分ひとりの能力で立ち向かい、真剣に勝敗を競い合うので、人間形成の上でも貴重な経験を積むことが出来ます。また、勝つか負けるかという厳しい争いを体験することで、勝ちたいという旺盛な意欲を持つことに繋がり、激しい稽古にも耐えうる精神が生まれることになります。

 

「有効打突の条件」について説明しなさい。

有効打突とは、一本と認められる打突のことで、その条件が、全日本剣道連盟の「剣道試合・審判規則」「同細則」に規定されているものです。

有効打突の条件は次の通りです。

(1)充実した気勢     ・・・ 気力が充実していて、相手を圧倒する気勢がある。

(2)適正な姿勢      ・・・ 竹刀の打突方向と打突したときの体勢が調和し、動的な姿勢が安定している。

(3)打突部        ・・・ 竹刀の物打で打突している。

(4)打突部位を刃筋正しく ・・・ 竹刀の打突方向と刃部の方向が一致している。

(5)残心がある      ・・・ 打突後の気構えと身構えが示されている。

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審査は準備の段階から始まっている

二、三段筆記問題2

開催される自治体によって、審査当日出題される場合と、事前に解答を作成してレポートのように提出する場合とがあるようです。

レポート形式で提出するタイプの筆記試験で実際にあったことですが、全日本剣道連盟発行の問題例・解答例を書き写す際に、解答が次のページにまで及んでいることを確認せず、必要事項の一部を書き忘れたまま提出した受審者が多数いた会場がありました。口頭試問を行ってもらえたため不合格は免れたようですが、このようなことがないよう、ただ丸写しするのではなく、やはり内容をきちんと理解して受審したいものですね。

 

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