「剣道日本代表コーチが教える 剣道に必要なトレーニング(筋トレ)とは」【高橋健太郎氏】#1

2020年9月20日 • お役立ち記事 • Views: 8492

高橋健太郎スタイル 剣道のための体づくり

今回からのシリーズ(全10回)では、剣道日本代表トレーニングコーチ高橋健太郎先生に、剣道に必要なトレーニングとは何かを教えていただきます。

1回目である今回は、まず、剣道になぜ筋力トレーニングは必要なのか?また、どのようなトレーニングをすればよいのかをお伺いしました。「稽古さえしていれば、特別に筋トレとか必要ないのでは?」という声も時々耳にしますが、日本代表コーチの高橋健太郎先生はどのようにお考えをお持ちなのでしょうか?

剣道に筋トレは必要か?

筋力トレーニングはなぜ必要か?

──剣道をやっていれば、それなりにつく筋肉で十分なのかというところについての先生のご見解はいかがですか?

高橋「そうですね、僕が考えるには、稽古の量が多いという場合であれば、ある程度年齢のこともあると思うんですけども、やらなくてもいい場合もあると思います。ただし、やった方が絶対にいいというか、損はないですね」

高橋「筋力トレーニングは、剣道が強くなるためにするのではないんですね。『なんでトレーニングするのか?』というのを、中学生とか高校生とかにもよく聞くんです。すると、『剣道する時に竹刀を速く振りたい』とかそういうことを答えてくるんですけれども、基本的にはそうではなくて、ケガをしない身体を作るということを考えた方がいいと思うんですよね」

 

ケガをしないための体作り

高橋「それは、要はケガをしないということはどういうことかというと、例えば、何か外から強い力を加えられた時とか、それに耐えうる筋力があるかないかのでは、ケガの度合いが変わってくると思いますし、また、ケガをしてしまった場合に、それを治すためには、稽古を休まなければならない、練習を休まなければならない、試合にも出られない、そうなってくると、当然、最終的に見ると、パフォーマンスが下がってしまうという」

高橋「なので、ケガをしないために、要は家と一緒で、家の土台とかと同じように、土台をしっかりさせるという意味で、ある程度の基礎体力という意味で、足りない部分のトレーニングをしていくことは非常に重要なことだと思っています」

高橋「なるべくケガをしない、そのためには、剣道はどうしてもケガが少ないという風に言われていますけれども、その中でもやはり、接触もありますし、転倒もありますし、そういうことでケガをしてしまうという可能性も少なくない、そういうケガをなるべくしないような体力・筋力が重要だと思っています」

 

剣道家のケガ

──先生が見られているなかで、剣道のケガで多いものはなんですか?

高橋「ケガで多いのは、交錯、要はぶつかったときに、転んで足首を捻挫してしまうとか、そういったものは多いですね。あと、多いのは、どうしても跳躍運動を繰り返しますので、これはケガと言うよりも、スポーツ障害、つまり剣道をずっとやっていく中で慢性的に起こってくる障害になると思うのですが、アキレス腱が痛くなってしまうとか、かかとが痛くなってしまうというような障害が多いように思います。下半身のほうが上半身に比べると、どうしても多く出てきますね。プラス、あとは、剣道をながくやっていたりすると、どうしても体当たりとかがありますから、そうすると、腰が痛いとかいうのは多分経験している人は非常に多いと思いますね」

 

──腰痛とか?

高橋「はい。腰痛であるとか、あとは、肩周りですね。」

 

柔軟性=ケガ予防

高橋「ですから、トレーニングというのはやはり重要であるかと思いますね。筋力だけではなくて、トレーニングというと、どうしても筋力トレーニング、例えばウェイトトレーニングのようなものをイメージすると思うのですけれども、そうではなくて、ストレッチも含めて、柔軟性を高めるということも重要なトレーニングのひとつだとは思います」

 

選手に求めるトレーニング

──これはまた繰り返しになるかもしれませんが、選手に求めたいトレーニングというのはどういうものですか?

高橋「選手に求めるトレーニングというのは、ある程度高い負荷に耐えられること、要は俗に言う「体力」です」

 

「体力」=耐える能力

 

高橋「「体力」というとなんか持久力ということを考えがちで、当然、持久力も入ってくるんですけれども、全身の持久力であるとか、あとは筋持久力、筋力、柔軟性、あとは敏捷性であるとか、そういったものすべてがどうしても必要になってくるかなとは思いますね、選手の場合は。普段の稽古でも当然つけられることはできるんですけれども、例えば、これも全身の持久力というものを考えたときに、稽古の時間が例えば1時間ありますと、50分までは体力が持つんだけれども、あとの10分はもうくたくたになってしまう。としたら、この10分はどうしますか?流しますよね?どうしても、トップではできないですよね。それが、1時間全部トップギアに入れて出来る体力があれば、その1時間は非常に効果の高い1時間になるわけですよね」

 

──内容の濃いものに…

高橋「はい。そして、その10分は、たかが10分かもしれない、5分かもしれないけれども、1年間を通して考えると、それはロスとしてはものすごい時間になります。ですので、いつも要はそこで疲れてしまうとかいう場合には、やはり全身の持久力は稽古だけではなくて、プラス、選手の場合はプラスα、どこかで全身の持久力をつけるようなトレーニングが当然必要になってくるかなと思いますね」

 

全身の持久力と筋持久力

持久力とは

──筋持久力というのを、最近よく聞くのですが、実際それはどういうものですか?

高橋「全身の持久力というのは、心肺機能のことですね。筋持久力というのは、筋肉が繰り返し同じ動作が出来るかどうかということだと思ってもらえればいいですね。

素振りのような同じことを繰り返していると、当然疲れてきますよね?それは筋肉が疲れてくるわけですよね?体力的にはまだ大丈夫なんだけれども、筋肉は疲れてしまうということはある」

 

──いわゆる乳酸がたまるとかいう、そういうやつですか?

高橋「そうですね~乳酸がたまるという言い方が分かりやすいのかもしれないですけれども、だんだん筋肉が動かなくなってくるというような状態ですね」

 

──同じ動作を同じレベルで出来なくなってくるという…

高橋「そうですね」

 

──では、それが出来る長さが延びていけばいい…

高橋「はい。そうですね」

 

全日本選手権 1試合平均10分

高橋「例えば、全日本選手権で優勝することを考えた場合、1回の試合の平均時間が約10分なんですね。それで、優勝するまでには、6回戦わないといけないんです。ですから、優勝するためには、要は60分間の試合をするわけなんですけれども、最終的に60分間トップギアで試合が出来るか、もしくは多少ちょっと疲れてきてしまって、100%の力が出せないんじゃないかというところを考えたときに、普通に考えて、要は決勝戦を戦うときに、全然疲れていないで戦えた方が有利なのはもう当たり前というか、疲れてしまうよりも疲れていない状態で決勝戦までいければベストだと思いますね」

 

──それでは、そこは日本一を目指すための最低限のレベルということですね。

高橋「そうですね、はい」

 

日本代表剣士の体力は

──日本代表剣士の体力というのは、どのくらいなのでしょうか?

高橋「非常に高いですね。世界大会の前に国立科学スポーツセンターというところに行って、みんなフィジカルチェックやメディカルチェックをするのですけれでも、例えば、寺本選手の場合は、Jリーグなどで活躍しているような選手よりも高いです」

 

次回 日本代表選手の体力とは

今回は、剣道になぜ筋力トレーニングは必要なのか?について解説いただきました。

解説動画はこちら→ 日本代表コーチが語る 剣道に必要なトレーニングとは【高橋健太郎氏】#01

 

 

剣道日本代表選手は、Jリーグの選手以上の体力をお持ちとのこと。大変興味深いところで、第1回目が終わってしまいました。

次回は、日本代表選手の体力がどのくらいすごいのかを、引き続き、高橋健太郎先生にお伺いしたいと思います。

ご期待ください!

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