よくある剣道昇段審査設問の解答例(初段編)

2020年1月28日 • お役立ち記事 • Views: 269443

剣道の昇段審査には、初段から五段の場合、実技・形の審査の他に、学科試験という筆記試験があります。

「級審査の時にはなかった!」と戸惑われる方もいらっしゃるかもしれませんが、きちんと対策しておけば大丈夫です。




昇段審査対策として、よくある設問に対する解答例をまとめてみました。

今回は『初段編』です。

昇段審査設問の問題解答例

問われているのは、

問 題 例

剣道修業の目的について述べなさい。

剣道を始めた動機について述べなさい。

剣道の効果について述べなさい。

「稽古の心構え」について述べなさい。

「基本の大切さ」について述べなさい。

剣道で礼儀を大切にする理由について述べなさい。

「使ってはいけない竹刀」とはどのような竹刀か説明しなさい。

剣道における「三とおりの礼」について説明しなさい。

竹刀の「構え方と納め方」について説明しなさい。

剣道における間合いについて説明しなさい。

切り返しの目的を述べなさい。

剣道の打突部位をあげなさい。

体当たりについて述べなさい。

「中段の構えで注意すること」を書きなさい。

「素振りの種類」を4つ書きなさい。

「竹刀各部の名称」を書きなさい。

「有効打突」について説明しなさい。

「正しい鍔ぜり合い」について説明しなさい。

「しかけていく技の種類」を3つ以上書きなさい。

剣道における掛け声の効果(効用・ききめ)について述べなさい。

気剣体一致について説明しなさい。

「残心」について説明しなさい。

「基本打突や技の練習」で気をつけることを述べなさい。

日本剣道形に使われている「五つの構え」について書きなさい。

日本剣道形を実施するときの「足さばき」で気をつけることを書きなさい。

「試合に臨む心構え」について述べなさい。

剣道試合・審判規則での「禁止行為」を5項目書きなさい。




解 答 例

剣道修業の目的について述べなさい。

剣道は、剣の理法の修練による人間形成の道であり、日本の歴史とともに私たちの先祖が長い間努力と工夫をこらして実生活の中に取り入れ、その尊い経験から生み出された日本独自の運動文化です。

昔から日本は「尚武」の国と言われてきましたが、それは闘争を目的とする武力ではなく、健全な真の平和を築くための武道であって、自己の健康体と健全な精神力を作り上げることを目的とします。

ですから、まず、(1)技を身につけること、(2)身体を鍛えること、(3)心をみがくことを、剣道修業の目的として励みます。

剣道は、ただ竹刀で打ち合い、勝敗を競うだけの競技ではなく、剣道を通じて、健全な身体と心、正しい礼儀を身につけるために稽古するものです。そして、これら剣道の稽古で身につけたものは、剣道を離れた普段の生活のさまざまな場面でも生きていくようにしなければなりません。

剣道を始めた動機について述べなさい。

解答は人それぞれですから、これが正解というものはありませんが、「健康になりたい」とか「意志の強い人間になりたい」とか「親に薦められたから」など、自分なりの理由を、率直に書けばよいです。

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剣道の効果について述べなさい。

剣道を稽古すると、技が身につくとともに、身体的・精神的・社会的に多くの効果があります。

・身体的効果

姿勢が正しくなる、動作が機敏になる、持久力がつく

・精神的効果

努力と忍耐の習慣がつく、集中力・決断力・自主性がつく

・社会的効果

礼儀が正しくなる、相手の動きや気持ちを観察する能力が養われる、安全に対する能力が高められる

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「稽古の心構え」について述べなさい。

「稽」は「考える」という意味で、「稽古」のもとの意味は、「古(いにしえ)を考える」「昔のことを調べ、今なすべきことを知る」です。そこから派生して、芸能や武術を学んだり習ったりすることにも「稽古」が用いられるようになりました。ですから、漫然と稽古するのではなく、長期的な目標や1日などの短い期間の課題を持って、常に旺盛な気力で積極的かつ真剣に取り組むようにすることが大切です。また、独りよがりにならず、教えられたことを素直に受けとめ、礼儀作法を重んじることも必要です。さらに、稽古の後は、必ず反省をして、今後のために工夫や研究をする姿勢が大事です。

「基本の大切さ」について述べなさい。

各種の芸道やスポーツにおける、高度な技術や表現は、すべて基本の習熟によって発揮されるものであり、剣道でも上達するためには基本が大切である。基本をしっかり身につけることで、技術に無駄がなくなり、効率的で正確な技術が身につくようになる。

剣道で礼儀を大切にする理由について述べなさい。

剣道は対人競技であるので、ややもすると闘争本能むき出しにしてしまう場合があります。このような闘争本能を、人間として制御するところに、剣道における礼の意義があります。そのため、剣道では、昔から「礼に始まり、礼に終わる」と厳しく教えられ実践されてきました。

剣道を修練する上で、共に稽古する先生や仲間は、互いに心を錬り身体を鍛え、技を磨くためのよき協力者ですから、互いに人格を尊重し感謝の気持ちを忘れずに、端正な姿勢をもって礼儀正しくすることが、剣道にとってとても大切なことです。

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「使ってはいけない竹刀」とは、どのような竹刀ですか説明しなさい。

(1)試合・審判規則に明示されている竹刀の基準以外のものを使用すること。

(2)竹片がささくれたり、折損や亀裂などがあったりするもの。

(3)中結が切れていたり、先革や柄革が破れていたりするなど、付属品に破損があるもの。

(4)規格にあった付属品を正しく使用していないもので、先革の長さやその直径が基準より小さいもの。

(5)中結を剣先より全長の約1/4の位置に固定していないもの。

剣道における「三とおりの礼」について説明しなさい。

剣道には、三とおりの礼があります。立った姿勢でおじぎをする立礼が二とおりと、正座の姿勢からおじぎをする座礼が一とおりです。

(1)上席に対する礼

立った姿勢で上体を約30度前傾して行なう礼

(2)試合や稽古の際の互いの礼

立った姿勢で上体を約15度前傾し、相手に注目して行なう目礼

(3)座礼

    正座の姿勢から上体を前傾しつつ、同時に両手を「ハの字」の形にして

床につけ、その中心に鼻先を向け、静かに頭を下げる。

一呼吸おいて、両手を同時に床から離し、元の姿勢に戻る。

どの礼であっても、真心をこめ、節度をもって折り目正しく行なうようにします。

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竹刀の「構え方と納め方」について説明しなさい。

構え方は、右足を少し前に出し、右手で竹刀の鍔元を下から握り、蹲踞しながら斜め上より竹刀を抜き、左手で柄頭を握って抜き合わせ、左足を引きつけて蹲踞します。

その後、立ち上がって、中段の構えになります。

納め方は、中段の構えから蹲踞し、左手を竹刀から離して腰にとり、右手で剣先を左上から後方に回し、弦を下にして左腰に当てます。

その竹刀を左手で握り、右手は軽く右ももに置いて立ち上がり、帯刀の姿勢になる。

いずれも、相手と合気になって行なうことが大切です。

剣道における間合いについて説明しなさい。

間合いとは、自分と相手との距離のことです。

間合いには、一足一刀の間合、遠い間合、近い間合の3つがあります。

(1)一足一刀の間合 :剣道の基本となる間合。一歩踏み込めば、相手を打突でき、一歩下がれば当ての打突をかわすことができる距離のことである。

(2)遠い間合(遠間):相手との距離が、一足一刀の間合より遠い間合で、相手が打ち込んできても届かないが、同時に自分の打突も届かない距離のことをいう。

(3)近い間合(近間):相手との距離が、一足一刀の間合よりも近い間合で、自分の打ちが簡単に届くかわりに、相手の打突も自分に届く距離のことをいう。

切り返しの目的を述べなさい。

切り返しは、正面打ちと連続左右面打ちを組み合わせて、基本動作を総合的に練習するためのものです。

構えや姿勢・打ちの刃筋や手の内・足さばき・間合のとり方・呼吸法の修得、さらには筋力や気力の強化、気剣体一致の打突の修得を目的としています。

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剣道の打突部位をあげなさい。

剣道試合・審判規則において、打突部位は次の通りに定められている。

(1)面  :正面および左右面(こめかみ部以上)

(2)小手 :中段の構えの場合は右小手(左手前の時は左小手)、

中段以外の構えの時は左小手または右小手。

(3)胴  :右胴および左胴

(4)突き :突き垂

体当たりについて述べなさい。

体当たりとは、打突後の余勢で、自分の身体を相手に当てて、相手の体勢を崩して、打突の機会を作る動作のことです。

身体を相手にぶつけると同時に、両手の拳を相手の下腹部からすくい上げるようにして当たり、相手の気勢をくじくとともに、相手の体勢をも崩し、そこをすかさず打突できるようにします。

「中段の構えで注意すること」を書きなさい。

中段の構えの際に気をつけることは、次の5つです。

(1)両肩を落として背筋を伸ばす。

(2)背筋を立てて、顎を引く。

(3)腰を入れて下腹部にやや力を入れる。

(4)両膝を伸ばして、重心を両足の中間にかけて立つ。

(5)目は全体を見つめる。

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「素振りの種類」を4つ書きなさい。

素振りには、次の4つがあります。

(1)上下素振り

(2)斜め振り

(3)空間打突

(4)跳躍素振り

「竹刀各部の名称」を書きなさい。

竹刀各部の名称は、次の図の通りです。

竹刀各部名称

全日本剣道連盟『剣道学科審査の問題例と解答例』より引用

 

「有効打突」について説明しなさい。

有効打突とは、充実した気勢、適正な姿勢、竹刀の打突部で打突部位を正しく打突し、残心あるものをいいます。

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「正しい鍔ぜり合い」について説明しなさい。

鍔ぜり合いとは、相手を攻撃したり、相手が攻撃したりしてきた時に、間合が接近して鍔と鍔がせりあった状態をいいます。

自分の竹刀を少し右斜めにして手元をさげ、下腹部に力を入れて自分の身体の中心を確実に保つようにします。

お互いの鍔と鍔がせりあう中で、手元の変化や体勢の崩れから打突の機会を作っていきます。

注意することは次の6つです。

(1)手元をさげ、下腹部に力を入れて腰を十分伸ばす。

(2)首を真っ直ぐに保ち、相手と丈比べをする気持ちで相対し、身体が前傾しないようにする。

(3)お互いの鍔と鍔がせり合うようにする。

(4)相手の肩に竹刀をかけたり、刃部を身体にかけたりしない。

(5)必要以上に力んだり、気を抜いて休んだりしない。

(6)積極的に技を出すか、分かれるようにする。

「しかけていく技の種類」を3つ以上書きなさい。

(1)一本打ちの技 (2)払い技 (3)二・三段の技 (4)出ばな技 (5)引き技 (6)かつぎ技 (7)片手技 (8)上段からの技 (9)捲き技  の中から3つ以上解答します。

剣道における掛け声の効果(効用・ききめ)について述べなさい。

例えば、次のようなことです。

(1)自分の気力を充実させる。

(2)相手を威圧する。

(3)自分の力を集中して、より以上の勢いと力を発揮させる。

(4)気剣体の一致をはかり、打突を正確にさせる。

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気剣体一致について説明しなさい。

気とは気力、剣は竹刀操作、体は体さばきと体勢のことです。

主に打突動作に関する教えで、これらがタイミングよく調和し、一体となった時に有効打突となります。

「残心」について説明しなさい。

残心とは、打突した後でも油断することなく、相手の反撃に対応できる身構えと気構えのことです。

具体的には、

(1)打突後に間合をとって、相手の反撃に備える。

(2)打突後に適正な間合が取れない場合、自分の剣先を相手の中心につけるようにして、相手の反撃に備える。

とすることです。

なお、残心のないものは有効打突にはならないので、残心をとることを忘れないようにしなければなりません。

「基本打突や技の練習」で気をつけることを述べなさい。

(1)正しい姿勢で、気力を充実させ、互いの攻め合いから打突する。

(2)適正な間合から、打突の機会を的確にとらえ、大技で打突する。

(3)一打ごとに充実した気勢で、確実に気剣体一致の有効打突となるようにする。

(4)手先や腕で打つのではなく、充実した気勢と身体を伴い、腰から打突する。

(5)打突後は、身構え・気構えなどの残心をとり、次の打突に備える。

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日本剣道形に使われている「五つの構え」について書きなさい。

日本剣道形の太刀の構えは次の5つです。

(1)中段の構え すべての構えの基礎となる構えで、攻防に最も適した構え。

(2)上段の構え 太刀を頭上に振りかぶり、相手の気を圧して、捨て身で攻撃する性格を持つ構え。諸手左上段と諸手右手上段があります。

(3)下段の構え 剣先を下げて、自分の身を守りながら、相手の変化に応じて攻撃に転ずる構え。

(4)八相の構え 太刀を大きく右肩にとり、相手の動作を監視しながら、相手の出方によって攻撃に出る構え。

(5)脇構え   半身になりながら太刀を右脇にとり、相手の動作を確認しながら臨機応変に攻撃に転ずる構え。

日本剣道形を実施するときの「足さばき」で気をつけることを書きなさい。

(1)足さばきは、すべて『すり足』で行ない、踏み込み足は用いません。重心は上下にぶれないようにして、滑らかに行なうようにします。

(2)足の運びは、前進するときは前足から、また、後退するときは後ろ足から行なうことを原則とします。

(3)足のさばきは、原則として、片方の足にを動かしたら他方もそれに伴うようにします。特に、打突時の後ろ足は残さず、前足に引きつけることを忘れないように気をつけます。

「試合に臨む心構え」について述べなさい。

試合をするときは、勝敗のみにこだわらないで、対戦相手の人格を尊重し、正しい姿勢や態度、充実した気勢をもって、正々堂々と公明正大に競い合う心構えが大切です。

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剣道試合・審判規則での「禁止行為」を5項目書きなさい。

(1)薬物を使用する。

(2)審判員および相手に対し、非礼な言動をする。

(3)定められた以外の用具(不正用具)を使用する。

(4)相手に足を掛けまたは払う。

(5)相手を不当に場外に出す。

(6)試合中に場外に出る。

(7)自己の竹刀を落とす。

(8)不正な中止要請をする。

(9)相手に手を掛けまたは抱き込む。

(10)相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。

(11)相手の竹刀を抱える。

(12)相手の肩に故意に竹刀をかける。

(13)倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる。

(14)故意に時間を空費する。

(15)不当な鍔ぜり合いおよび打突をする。

の中から5項目を選び解答します。

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知識も大切

稽古のワンシーン

このように、昇段審査のために理論的なことを勉強すると、普段稽古しているだけでは考えなかったようなことを知ることができます。

剣道の武道たる側面を改めて知ることで、剣道に対するより深い理解が得られ、それだけ稽古も充実するのではないでしょうか。

 

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