ヨーロッパの剣道人口は約2万人、剣道連盟への加盟国は42カ国にものぼります。年々盛り上がりを見せ、ヨーロッパ人を惹きつける剣道。今回の記事では、オランダでの剣道生活を通して出会ったヨーロッパの若者剣士たちに、なぜ剣道をするのかをインタビューし、まとめてみました。
目次
1.心と体を鍛え、自己成長するため
2.ただただ、楽しいから剣道をする
3.交剣知愛のため
4.各国の代表選手になり、世界選手権に出場するため
5.指導者になって剣道を広めるため
6.より良い人生を生きるため
移民の国オランダ。アムステルダムには180の人種が
オランダは移民を積極的に受け入れており、首都のアムステルダムには180もの人種の人々が暮らしています。
隣国のドイツやフランス、ベルギーには車で3時間もあれば移動することができるため、剣道の道場にも様々な国から剣士が集まり稽古に励んでいます。2月には「飯島杯」という大規模な試合が開催され、アムステルダムに24カ国から剣士たちが集い試合を行いました。
ヨーロッパの剣道人口は約2万人、現在のEKF加盟国は43か国。このうちFIK加盟国は35か国です。年々盛り上がりを見せ、ヨーロッパ人を惹きつける剣道。今回の記事では、オランダでの剣道生活を通して出会ったヨーロッパの若者剣士たちに、なぜ剣道をするのかをインタビューし、まとめてみました。
1.心と体を鍛え、自己成長するため
ヨーロッパの人々の多くは、大人から剣道を始めます。このため、剣道を始めるきっかけも禅や日本文化への興味であることが少なくありません。
ロシア人のナタリーさん(31歳)は20歳から剣道をはじめました。剣道をする一番の目的は自己成長です。自分の弱い心と戦うことで、より良い人間になることを目指しています。
また、 全てを忘れて剣道に没頭する時間を持つことも大切にしています。剣道をしている間は、日常生活では味わえない強い感情や戦う気持ちを感じることができ、それも彼女にとっては大きな魅力なようです。
18歳から剣道を始めたポルトガル人のルイスさん(34歳)も、精神修養のために剣道をしています。厳しい稽古を通して心と体を鍛えること、そして自身の精神世界を探求するために剣道を続けています。ルイスさんにとっては、自分に自信を持つことや、他者への敬意を忘れないこと、謙虚でいるためにも剣道はとても重要だそうです。
2.ただただ、楽しいから剣道をする
深い理由はなく、ただただ楽しいから剣道をする方も。
オランダ人のRoelof(ルーロフ)さんは21歳から剣道を始め、現在30歳。「仕事をすると心や頭が疲れますが、剣道をすることでスッキリし、ストレス解消になるんだ」。身体は疲れても、剣道をした時としなかった時では、ぜんぜん違うと語ります。
ユダヤ系オランダ人のGideon Hamburger(ギデオン・ハンバーガー)さんも、剣道に没頭し心から楽しんでいます。試合が楽しいだけではなく、道場で一緒に稽古に励む仲間との交流が剣道の魅力だそうです。
3. 交剣知愛のため
武道を真剣に学びたいーそんな想いを持って剣道を始めたオランダ人のMariëlla(マリエラ)さんは現在27歳。オランダ代表選手の一人です。
剣道を始めてすぐに道場の仲間と家族のように親しくなり、そのメンバーの一員であることを誇りに思っています。苦楽を共にすることで、人生がより豊かになったと語ります。
また、「剣道をより深く理解したい」という強い欲求が、彼女を突き動かし剣道に没頭させています。精神的にも身体的にも、剣道が自分に一体どんな影響を与えるのか、より高いレベルの剣道とは何なのか……常に探求しています。
ウクライナ人のオルガさん(24歳)は、14歳のときに剣道をはじめました。「スポーツがしたい、できれば”剣”に関わるものがいい」、そう思っていた矢先に偶然、剣道に出会ったそう。現在はオランダで暮らし、夫のアレックスさんと一緒に剣道家たちの写真を撮影するKENDOFAM(ケンドーファム)というプロジェクトに携わっています。
オルガさんが剣道をする目的は、交剣知愛。剣道はオルガさんに自信と心身の強さを与え、たくさんの素晴らしい友人を作るきっかけをくれたそう。「剣道はスポーツではなく、武道。その価値は、言葉にできないくらいです」とオルガさんは語ります。
4. 各国の代表選手になり、世界選手権に出場するため
「代表選手になって、世界選手権に出場したい」そんな熱い想いを持って剣道の稽古に望んでいる若者も。18歳のイタリア人、Fabio Bussi(ファビオ・ブッシ)さんが剣道をする目的は、イタリア代表選手に選ばれ、そして2018年の世界選手権に出場することです。
5.指導者になって剣道を広めるため
20歳から剣道を始めたオランダ人のJonathan de Croon(ヨナトン・ドゥ・クローン)さんは、現在26歳。友達に誘われたのがきっかけで剣道を始めました。
ヨナトンさんが剣道をする目的は2つあります。1つはオランダ代表選手に選ばれること。もう1つは、指導者になって剣道を広め、たくさんの剣道家をオランダで育てることです。
オランダでは和心館という道場に所属し、大人だけではなく子どもの指導にも携わっています。2018年の4月からは、国際武道大学に留学し、剣道のさらなる上達を目指しています。
手前:和心館の創設者Ivo van Roij(イヴォ・ヴァン・ロイ)さん
奥:ヨナトンさん
なお、和心館の創設者・Ivo van Roij(イヴォ・ヴァン・ロイ)さん(26歳)も国際武道大学に留学経験があります。イヴォさんは、身体を鍛えることや、日本の文化を知ること、そして自己成長のために剣道をしているそうです。和心館での稽古は、国際武道大学で行われた稽古法を踏襲しています。
和心館という道場名には、国際武道大学の先生方の「人とのつながりを大切にする“和”の精神の下、日々精進する場所にしてほしい」という願いが込められています。
6. より良い人生を生きるため
2018年春。国際武道大学に7人の外国人が剣道留学をしました。15歳から剣道を始めたPepijn Boomgaard(ペパイン・ボームガド)さんは現在24歳。オランダ代表選手として世界大会に出場予定です。剣道をする目的は、心と身体を鍛えること。そして、自分の人生をより良いものにするためだそうです。
同じく国際武道大学に留学中のオランダ領アルバ国のPim Willems(ピム・ウィレム)さんも、剣道をすることで仕事や勉強にも意欲がわき、日々の生活に良い影響を与えています。
尊敬する母国の道場の先生に薦められ、武道留学を決心したそう。
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日本にいるとなかなか触れる機会がない海外剣道。私たちの知らないところで日本の伝統文化が愛され、そして、探求したい、広めていきたいと思われています。
今回の記事がきっかけで、海外剣士の素顔や剣道を楽しむ気持ち、日本を愛する気持ちが少しでも伝われば嬉しく思います。
プロフィール
佐藤まり子
オランダと日本2拠点のフリーランス。Web構築とライター業が専門。FICC、広告代理店の新規営業、楽天を経て独立。オランダでは海外版BUSHIZOとして剣道用品の販売や翻訳を行う。持っている資格は剣道五段とTOEIC880点。趣味は旅行と読書と寝ること。
Twitter : https://twitter.com/mariko_cabin442 Facebook : https://www.facebook.com/mariko.cabin442 |
こんにちは、オランダでWebサイトの構築やライターとして活動している佐藤まり子と申します。私はWebサイト制作会社や広告代理店、楽天株式会社でデジタルマーケティングの仕事を経験後、2015年にフリーランス(個人事業主)として独立をしました。
学生時代に世界一周旅行をした経験から海外志向も強く、2017年にオランダに渡り起業、フリーランスビザを取得しました。オランダでは海外版BUSHIZOとして剣道用品の販売や翻訳業を行っています。